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僕と幼馴染みと黒猫の異世界冒険譚  作者: s_stein
第四章 魔界騒乱編

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第265話 あえて火の中に飛び込む

 ロムが青緑髪の毛先を、ラムが赤紫髪の毛先を指でいじり始めた。

「ラムなら、この子に賭けてみる?」

「ロム姉さんこそ、この子に賭けてみる?」


「「うーん」」


「面白いじゃない、ラム? 私、10ターラー金貨1枚」

「あら、ロム姉さん。私は、10ターラー金貨2枚よ」


 それを聞いていたネリーが、ジト目で二人を見ながらため息をつく。

「なんだ、お前達。そっちの賭けかい? 結論を期待して損したわい。……まあ、お前達の意見は『この子に任せて良い』ということだな? なら、今までのは作戦1として、この子に人質の救出を任せるのを作戦2とするかの。最終的には、グッゲンハイム隊長に判断を任せるが」


 ここでヴィルヘルミナがトールに質問を投げかける。

「もし、人質を救出したら、次にどうする?」

「今回の首謀者を引き渡すように要求し、相手の出方を見ます」


「つまり、相手に拳を振り上げさせる、と」

「はい。こちらから攻め込むと、それが相手に口実を与えることになります。取引の材料を奪い返せば、きっと相手から動いてくるはずです。それが宣戦布告なら、四天王を討ち取る作戦に移れば良いと思います」


 とその時、ポーンという音がして、ラムの目の前に手のひらサイズの紙片が出現した。

 宙に浮いた紙片を受け取ったラムが、それにサッと目を通してニヤリとした。

「人質がわかったわよ。一人は、森の近くのヴァルトブルク村に住む十六歳の少女よ。他の四人は、男一人女三人で、ローテンシュタイン帝国の人間らしいけど、素性がわからず、捜索願が出ている人物に一致しないって」

「ラム。もしかすると、一家全員が人質で捜索願が出ていないとか?」


 すると、また、ポーンいう音がして、今度はロムの目の前に手のひらサイズの紙片が出現した。

 紙片に目を通したロムが、眉をしかめる。

「あら!? 何これ!? ちょっと想定外ね。天空の魔王の兵士ではなく、側近達が若干の兵を連れて動いただけらしいわ。兵のほとんどを温存しているから、水晶の魔王と(あお)の魔王の軍隊が動けないって」

「ロム姉さん。おそらく、天空の魔王は、エルフの脅迫状で帝国側がどう動くのか、確かめているのよ。相当、慎重のようね。もしかすると、今回のエルフの行動に対して、疑心暗鬼なのかも」


 ヴィルヘルミナが長い左腕を伸ばし、トールの右肩をポンポンと叩いてニヤッと笑う。


「どうやら、君の行動が、帝国とエルフと魔界の命運を賭けているみたいだね」


 隊長の言葉をしっかりと受け止めたトールは、緊張のあまり、全身の筋肉がこわばった。

 だが、その直後、何かが吹っ切れ、体中に爽やかな快感が染み渡った。

 内側から、勇気が溢れてくる。

 なんという壮快な気分。

「はい!!」

 トールの元気な声に、皆は覇者の意気を感じた。


 ここで、ネリーがまとめに入った。

「では、グッゲンハイム隊長の判断は、作戦案2ということだな?」

「はい。人質奪回作戦で行きます」


「よろしい。奪回後の作戦は?」

「現時点ではいくつか選択肢が考えられますので、それぞれの選択肢について案を検討します。最終的には、上層部の判断を仰ぎます」


 ここで会議は終了となった。

 ネリーは、前回と同じく、ロムとラムと一緒に煙のように消えた。

 部屋を出たトールは、ロムとラムがなぜ大人の姿だったのかを聞き忘れて、失敗したと思った。

 だが、その心を察したわけではないだろうが、アーデルハイトが教えてくれた。

 彼女達は、変装ならぬ、変身で密偵の仕事をしているとのこと。

 アーデルハイトはもちろん、ネリーでさえも彼女達の本当の姿を知らないのだそうだ。


 それから、四人は雑談をしながら廊下を歩いていると、向こうから女の衛兵が近づいてきた。

 彼女は、トール達に急な来客があって、客間で六人を待たせていると伝えた。

 全員が金髪で、白いドレスを着ているという。

 トールは、なんとなく誰かはわかったが、六人とは多すぎるので首をかしげた。

 四人は、衛兵の先導で客間へと向かった。


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