第257話 情報相からの呼び出し
10時半頃に研究所へ到着したトールとクラウスは、さっそくメビウスに状況を報告した。もちろん、心配していたマリー=ルイーゼ達五人も同席した。
トールは、黒猫マックスのお手柄を披露することに時間を費やし、自分の新たな魔法の成果については、大したことがないような言い方をした。
それはトールなりの謙遜なのだが、メビウスもクラウスも理解ができなかった。
なぜ、そこまで謙遜するのか。
習いたての魔法を即座に応用すること自体、常人では到底できないことなのに。
二人から散々非難を浴びて、さすがのトールも、しゅんとなった。
もっと、自分の成果をアピールしろ、と。
正しく自分の力量を評価しろ、と。
黒猫マックスも持ち上げられてむずがゆくなったらしく、「敵を倒したのは小僧だ。俺は予知したことを言っただけ」と言ってあくびをした。
その後、クラウスの魔法の特訓が再開された。
だが、ヒルデガルトが3つ目を習得し、トールが2つ目の免許皆伝一歩手前になったとき、昼休憩となった。
そこへ、アーデルハイトの使い魔である鳩ちゃんが、しゃべる手紙を運んできた。
符牒の表現はここでは省略するが、内容は以下の通り。
『トール達六人全員が、今すぐローテンハイムの宮殿へ行って、ネリー・アンドレーエ情報相を訪ねること。新たな動きがある。護衛として第7魔法分隊の車がそちらに3台向かうから、分乗すること』
1時間ほどすると、研究所の前に軍の大型車が3台並んだ。
大型車と言っても、幌付き馬車の馬が二人乗りT型フォード車になっただけである。
トール達六人を出迎えた中に、アーデルハイト・ゲルンシュタインの姿があった。
彼女は年長組一年生になっていたので、着用している戦闘服は、彼らが見慣れた年中組のそれとは異なっていた。
上は濃紺のセーラー服風。肩章の金星は、上級生の証で、眩しいくらい輝いている。
一年生は通常1個だが、彼女は能力が高いので2個だ。
下は細くて水色の横ストライプが2本入った白いミニスカート。これに短めの黒いブーツを履いている。
彼らは、跳び上がらんばかりに再会を喜び合った。




