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僕と幼馴染みと黒猫の異世界冒険譚  作者: s_stein
第四章 魔界騒乱編

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第254話 結界を貫く魔剣と矢

 トールは、黒猫マックスを抱きかかえたまま、右方向へ歩き出した。

 当てがあったわけではなく、車が引き返したのかと思って、車が来た逆方向へ歩いただけなのだ。

 通行人は、迷子になって困っているトールの顔と腰に視線を向けるが、誰も声を掛けてくれない。


 しばらくキョロキョロしながら歩いていると、黒猫マックスが「ヤバい。左から撃たれる」と押し殺すような声で言う。

 トールはその言葉から、照準器の中に映る自分が頭を狙われているのを想像して緊張し、わざと酔っ払いのように揺れ動きながら歩いた。

 これなら狙う方も撃てないだろう、という単純な発想だ。

 そして顔を左に動かし、スナイパーを探す。


 だが、車道を挟んだ向こうにある歩道には、通行人はいるが誰もこちらを向いていない。建物の窓にも人影が見えない。

 焦る彼は、視線をジグザグさせながら上へ移動する。

 とその時、屋上付近にて何者かが頭を下げたのを見つけた。

 それは赤髪ではなく灰色のフードだったが、コルダ・エンマに違いない。

 すぐさま彼は、右斜め前にあった建物と建物の隙間に逃げ込んだ。


 小走りで隙間をくぐり抜けた先は、人が二人ほど並んで歩ける程度の狭い裏通りだった。

 道は舗装されておらず、むき出しの地面の上を、湿った風がなでている。

 表通りに面した建物の陰で薄暗くなった建物が、長屋のように並んでいる。

 その構えから想像するに、夜になると開く酒場か、いかがわしい商売の店に思えた。

 当然、朝っぱらのこんな時間には、徹夜明けで酔い覚めを待つ酔客はおろか、ネズミ一匹も歩いていない。


 さてどちらへ逃げようか、と迷っているトールの鼓膜を、黒猫マックスの絶望的な言葉が叩いた。

「挟まれたぜ! 左右から来るぞ!」

 彼は警戒を最大にして、左右へ忙しく視線を向ける。

 3秒、4秒、5秒。


 果たして建物の左右の陰から、灰色のフードをかぶり、灰色のローブで身を包んだ修行僧らしい人物が現れた。

 どちらも、10メートルほど離れている。

 左は男、右は女。

 髪の毛の色はわからないが、顔の感じからサボー・フリジェシュとエステルハージ・モニカだ。


 フリジェシュは、空中から小ぶりの剣を取り出して構え、トールに向かって走り出した。

 彼の手にする剣は、握る手の先でみるみるうちに大きくなり、長さは1メートルを超え、幅は30センチメートルを超えるサイズになる。

 モニカは、空中から洋弓と紫の炎を纏う3本の矢を取り出して構えた。間違いなく、同時に3本を射るはずだ。


 トールは黒猫マックスを降ろすと、咄嗟の思いつきで、腕をそれぞれ彼らの方へ伸ばして両側に防御結界を張った。

 クラウスから習ったときは、両手を突き出す構えだったが、それは正面からの攻撃しか想定していない。

 左右から攻撃される場合の、防御結界の張り方は、彼の思いつきだった。


 これは功を奏した。トールほどの力量があればこそ、できたからかも知れない。

 左手の先の防御結界はフリジェシュの大剣を果敢に受け止め、右手の先の防御結界はモニカの放った3本の矢をしっかり受け止めた。

 ただ、よく見ると、大剣が1ミリ1ミリ結界の中へ食い込んでくる。矢尻も紫の炎を纏ったまま徐々に中へ入ってくる。

 力を入れても、押し戻すことができない。

 このままでは、いつ何時、それらが身体に達するか。


 そこでトールは、一か八かの賭に出る。

 彼は、()って倒れ、両手の防御結界を解除した。

 2本の矢が、彼の胸があった位置を通過する。1本が彼の衣服をかすめる。

 そのままフリジェシュに矢が突き刺さると思いきや、矢の方がフリジェシュの手前で停止して120度向きを変える。

 しかし、急に結界がなくなって振り下ろされた大剣が、横へ向きを変えた3本の矢をすべて叩き折ってしまった。


 これは願ってもない展開。

 トールは、ここで反撃に出る。


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