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僕と幼馴染みと黒猫の異世界冒険譚  作者: s_stein
第四章 魔界騒乱編

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253/369

第253話 想定通りの罠

 朝7時。

 珍しく曇り空で、生暖かい風が吹く。

 トールは黒猫マックスと一緒に、クラウスが運転するT型フォードに似た車の中で揺れていた。

 この車はスプリングが効いていないので、道路の凸凹がもろに伝わるのが少し難点。

 眠気を誘わないこの揺れが不快なので、気分転換にと、トールは運転手相手に雑談を始める。

「クラウスさん。スカルバンティーア大公国の人って、身体的特徴がありますか?」

「ああ、彼らは耳が上に尖っているけど、尻尾がないね。同じ耳で尻尾があれば、ローテンシュタイン帝国の人だ。ちなみに、エルフ族は、耳が横に長い」

 クラウスは、視線を常に前へ向けながら答えた。


「そういえば、フランク帝国の人は、耳が丸くて尻尾がなかったです。国によって、いろいろ違うのですね」

「彼らは君達に、どことなく似ていただろう?」


「言われてみれば」

「同じ特徴を持つ人種の部族が、自然とまとまって国を作った、って感じだね。大昔は、村や町に領主様がいて、それぞれが自治を持つ国みたいだったから、もの凄い数の国があったんだよ」


 その後は二人の間で、ローテンシュタイン帝国の歴史や、とりとめのない雑談が続いた。

 そうこうしているうちに、トールは田園風景の中に建物群が見えてきたことに気づく。

 目的地のヒュッテンだ。


 クラウスは、手紙で指定された役所の前に車を横付けした。

 ちょうど近くにいた町の住人は、車が珍しいのか、ゾロゾロと集まってきた。

 車を降りたトールは、黒猫マックスを抱きかかえながら見物人を掻き分けて、いかめしい構えの木造建築を見上げた。


 そして、彼は周囲を見渡して、尻尾のない人物を探した。

 案の定、いる。

 車の見物人と通行人の中に、合わせて六人ほど。

 しかも、全員がトールの腰の辺りへ視線を投げかけている。

 おそらく、自分達と同じく尻尾がないことを確認しているからなのだろうが、トールの目には全員が変装した賞金稼ぎに映る。

 彼は、逃げ込むように役所の扉を押した。


 建物の中は少々薄暗く、ひんやりしていて、独特の木の匂いがした。

 正面の受付に猫族の若い女が座っていた。

 彼女は、飛び込んできたトールよりも、黒猫マックスの方へ珍しそうに視線を向けている。

 右目と左目の色が違う黒猫マックスが、よほど気になるのだろう。

 トールは、視線をいつまでも自分の胸辺りに向ける受付嬢へ、「魔法省の役人から呼ばれたのですが」と伝えた。

 すると、彼女は顔を動かさず、視線だけ上に上げて「ちょっと待ってニャ」と言う。

 そして、「待ってニャ」を連呼しながら、奥の部屋へと引っ込んだ。


 それからが長い。

 イライラするほど待たされたトールは、奥の部屋の扉が開かないかと、首を伸ばす。

 やっと現れた彼女は、右手を左右に振り「そんニャ役人、来てニャいニャ」と答えた。

 最初から覚悟の上だったトールだが、彼女の言葉を聞いて、背筋に悪寒が走った。


 やっぱり、罠である。


 彼は軽く一礼してその場を急いで立ち去り、扉を引いて外に出た。

 ところが、足を踏み出した途端、彼はギョッとして立ちすくむ。

 目の前にあるはずのものがない。

 歩道の半分を埋めていた人だかりも、車までもが忽然と消えていたのである。


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