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僕と幼馴染みと黒猫の異世界冒険譚  作者: s_stein
第一章 異世界転生編

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第25話 魔法使いVS魔法学校講師

 魔法使いは、クラウスとの距離を10メートルくらいとってから歩みを止めた。


 クラウスは、距離を置いている男を小馬鹿にしたようにククッと笑う。

「なんだ。怖いんだ」


 男は黒頭巾と黒いマスクで目以外を隠しているため、表情は全く見えない。

 これは、砂埃などないこの土地には不要な防備で、炎天の暑さには不向きな服装である。


 わざわざこれを着用する意味を考えると、黒頭巾の中に血走った目だけこちらに向けているように見えるから不気味さを演出するにはよいが、見方を変えると、本当は顔を見られることに対して極端に臆病なのだろう。


「どうした? なぜ顔を見せない? そんな格好で熱くないのか?」

「……」


「まあいい。ポーレ王国からわざわざこっちに出向いて、何が欲しい?」


 すると、男がマスクをモゴモゴと動かしながら、ドスの効いた声でクラウスを脅しにかかる。

「奴らを渡せ。さもないと命はないぞ」

「やっとしゃべったか。で、奴らって?」


「その馬車の中で強烈な魔力を持っている奴らだ」

「なぜそんな奴がいるってわかった?」


「答える必要はない」

「いや、ある。今、『強烈な魔力』って言ったろう? そんなのは、発動しないと感じないよ。黙って寝ている奴の魔力がダダ漏れのはずがない。なのに、なぜ強烈だとわかった?」


「国王の命令だ」

「質問の答えになっていないなぁ。君はちゃんとローテンシュタイン語を勉強しているのかい?」


「……」

「じゃあ、ポーレ王国が、彼らに何の用がある? 王様に謁見しろとでも?」


「知らん。でも、連れてこいという命令を受けた」

「へー。連れてくるのに用心棒を雇ったんだ。さらに、強烈な魔力が現れたという情報は、我が国でも、皇帝陛下以下数名しか知らないのに、なぜその情報がポーレ国王の耳に入るんだい?」


「……」

「君達の国には、遠方の魔力を感知できる魔法使いは、いないはずだが?」


 クラウスはそちらの国の情報収集能力はお見通しだと言わんばかりに遠慮なく放ち、一方で、そういう魔法使いはいなくても『情報屋(ネズミ)みたいなものが宮廷内に潜んで情報を収集している』からこいつらに情報が漏れたのだろう、と目星をつけた。


 男は、苛立ちを強くした。

「ええい! 我が国の国王の命令を妨害すると、外交問題になるぞ!」


 クラウスはそんな恫喝には一切動じることなく、すかさず言葉の剣で切り返す。

「馬鹿言え。勝手に人の国へ入ってきて拉致して帰る方が外交問題だぞ。それにさっき、『渡さないと命はないぞ』って言ったよね? いつから君のところの王様は、恫喝外交まで平気で行うようになったんだい? 悪党の頭領に成り下がったとしか思えないがね」


「畜生! 貴様は、国王を侮辱する気か!」

「おいおい、自国の王様を侮辱しているのは君達自身の方だぞ。君達のボスの命令を国王の命令にすり替えてるじゃないか。今までの会話を、我が国の皇帝陛下からポーレ国王への親書にして届けていただこうと思うがよろしいかな?」


「うぬぬ……」

「脅しなんか無駄無駄。魔力は僕達の方が君達より上だし、馬車の周りは強力な結界(あれ)が張ってある。さっきから、『分が悪い』って気づいているだろう? 顔、……というかその目がそう言っているよ」


 男は聞こえるように舌打ちをして、体の向きをくるりと180度回転させ、ゆっくり立ち去っていった。


 同時に、後ろからメビウスが「梱包(フェアパックング)!」と魔法名を叫ぶ声がした。

 クラウスは、その言葉よりも、逃げていく男の背中に気を取られた。


 実は、それが奴の狙いだった。


「なんだい、君。尻尾を巻いて――」

 とクラウスが言葉を途中まで言いかけた瞬間、後ろから茶色の毛布みたいなもので背中と両脇と両腕が包まれ、彼は宙に浮いた。

 宙に浮くと、足と頭も包まれた。


 時を同じくして、彼の足下近くに赤い光に怪しく輝いた魔方陣が出現し、下から閃光と爆発音とともに強烈な爆風が巻き起こる。


 毛布がクラウスを完全に包む直前にその爆発が起きたので、毛布の隙間から入り込んだ爆風によって、彼の衣服の一部、および額と頬と唇の一部がパックリと裂けて、血が噴き出した。


 彼が立っていた辺りの草むらは、一瞬にして黒焦げになった。


 全身を毛布にくるまれて宙に浮いたクラウスは、後ろ向きに飛ばされ、メビウスの足下近くで尻餅をついた。

 彼を包んで爆風から守った毛布は、目的を達すると同時に、煙のように消えた。


 強化魔法で全身が金色に輝いたメビウスは、心配そうに目を細めてクラウスを上からのぞき込み、彼の右肩にポンポンと手を当てて声をかける。

「すまん、すまん。ちと魔法の毛布で包むのが遅れたのう。後ろ向きになった奴が詠唱して発動した魔法をもっと早く気がつけばよかったが」


 クラウスは、男の背中を睨み、血の味がする唇を舐めながら、激しく悔しそうな顔をする。

「いえいえ。僕らの魔力が上なので、油断させて魔法を仕掛けたのでしょう。何とも卑怯千万な奴です!」


「わしも手伝うか?」

「いいえ、馬車の結界が破られないように、あいつら二人から頑丈に守ってください。後、御者の二人を私達の馬車へ避難させてください」


「わかった。……おっと。奴は、こっちを向いたぞ。笑ってやがるな」

「メビウスさん。向こうはこっちを殺すって言っていますけど、そう言って脅す奴らを、逆に殺したら外交問題ですかね?」


「もちろん」

「じゃあ、足の骨を粉々に砕いて、二度と立てないようにしてやりますか」


「それもまずい。懲らしめて、諦めさせるだけにしなさい」

「ううむ、……腹の虫が収まらないが、仕方ないか」


 それから魔法使いは、赤く輝く魔方陣を、次々とクラウスとメビウスの足下に出現させて爆発させる。もちろん、彼らは魔方陣の出現を素早く察知し、すんでの所で跳んでそれを交わす。

 もう一人の後方に陣取った魔法使いは、1メートルもある氷の矢を何十本も飛ばしてくる。


 しかし、奴らの攻撃をよく見ると、氷の矢が飛んでいく延長線上に立っているクラウス達を爆裂魔法で他の方向へ避けさせている形になっている。

 つまり、攻撃に連携がまるでなく、お互いがお互いを邪魔しているので、どちらの攻撃もさっぱり当たらないのである。

 なぜなら、攻撃側は自分のことしか考えず、今立っているクラウス達の場所に同時に攻撃を加えるから、こういう当然の結果になっているのだ。


 こうなると、これらの同時攻撃の繰り返しは、失敗を繰り返す。

 草むらに黒焦げの跡がドンドン増えていく。

 わずかに成功したことは、クラウスとメビウスを大いに翻弄させ、彼らの体力を徐々に消耗させたことだけだった。


 そうは言うものの、やられるに任せて、反撃もしないで大丈夫なのか!?


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