表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
僕と幼馴染みと黒猫の異世界冒険譚  作者: s_stein
第三章 魔王討伐編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

239/369

第239話 トールの最終奥義

「そらっ!」


 掛け声を上げて魔方陣を蹴ったトールは、野獣の鼻の先を通過して、ロケットのように舞い上がった。

 そして、急上昇しながら、右の手のひらに意識を集中する。


立方体(ビュルフェル)!!」


 彼が力強く魔法名を発すると、体内に対流する底知れぬ魔力が右の手のひらに集結し、光の立方体となってふくれあがった。

 立方体の表面は燃えているようにメラメラと揺らぎ、時折、外に向かってバシバシッと電光が走る。


 彼は上昇を続けながら、膨大な魔力を惜しみなくつぎ込んでいく。

 立方体はどんどん大きくなって顔に近づいたため、彼は右手を高く上げた。

 そうして、100メートルほど上昇し、跳躍の頂点に達したときは、光の立方体は1辺が10メートルを軽く超える大きさに成長していた。


 まだ行けそうな感じがした彼は、さらに魔力を注ぎ込む。

 と突然、体の熱が今まで感じたことがないくらい、高温になった。


「ヤバい! クラクラする!」


 オーバーヒートしそうになった彼は、魔力の注入を停止し、眼下に目を向けた。

 おそらく、野獣との距離は75メートル以上はある。

 立方体が野獣の頭上にあることを確認しつつ、彼は光の立方体の上に跳び上がる。

 そして、空中で逆立ちする格好で頭を下にし、落下する体勢に入った。


 これだけ巨大な立方体を、野獣にぶつけようというのだ。

 空中を蹴るための魔方陣は不要だ。

 自由落下で十分加速が出る。


 彼は、メラメラと燃える立方体を上から両手で押さえつけ、急降下した。


「うおおおおおおおおおおっ!! 巨人の(ギガンティッシェ)圧迫(プレセ)!!!!」


 彼は魔法名を叫び、一度肘を曲げてから急速に伸ばして、その弾みで光の立方体を下へ投げつけた。

 加速が付いた立方体は、野獣の頭上へ急接近する。


 力尽くでツタを切ることに夢中になっていた野獣は、巨大な落下物の標的になっていることには気づかなかった。

 上を見上げることもしなかった。


 あっという間に光の立方体は、野獣の頭を直撃して、瞬時に押し潰す。

 そのまま落下物は、まっすぐ地表にめり込み、隕石の衝突のように地中で激しく爆発した。


 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴッ……


 お椀を伏せたような大爆発は、直径100メートルほどの大きさに膨張した。

 強烈な閃光は、見る者の全身を光らせる。

 続く猛烈な爆風は、瓦礫も宮殿も、延焼被害のない建物までも、容赦なく吹き飛ばす。

 衝突の衝撃は、大地をひっくり返さんばかりに激しく揺さぶった。

 200メートル離れた目撃者にも、破片が飛び、粉塵が襲い、少し被害が出たほどだった。


 トールは、しばらく魔法で空中を漂い、粉塵がほとんど消えた頃に地表へ舞い降りた。

 ほんの少し前まで、背丈が23メートル近くの超弩級の魔王(サタン)が立っていた辺りは、直径80メートル以上、深さ60メートル以上の穴がぽっかりと空いていた。

 彼は穴の縁から中を覗き込んだが、土が見えるだけで、遺骸らしいものも痕跡も見当たらなかった。

 ただ、崩れた宮殿の柱に、ボロボロになったマントと服の断片が引っかかっているのが見えた。


 これが、魔王討伐完了の証拠となった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ツギクルバナー
cont_access.php?citi_cont_id=229234444&s
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ