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僕と幼馴染みと黒猫の異世界冒険譚  作者: s_stein
第三章 魔王討伐編

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235/369

第235話 隠されていた魔力の供給源

 魔力の供給源である(ぎょく)を失った魔王(サタン)だが、また自分の手の甲を治癒し始めた。

 まだ体内に膨大な魔力を宿しているからなのか。

 左手はかなりの手負いなので、時間が掛かりそうだが、右手の甲はほぼ完治した。


 これは、まずい。


 とその時、ヒルデガルトが青くなってジャクリーヌに耳打ちした。

 それを聞いたジャクリーヌは、血相を変えて大声を上げる。

「額の菱形の石を破壊しろ! あれも(ぎょく)の一種だ!」

 見上げると、野獣の額にはめ込まれたターコイズブルーに輝く菱形の宝石が、一層輝いている。

 魔力もそこから痛いほど放出されてきた。


 まだ魔力の供給源があった。

 菱形の宝石が、最後の隠し球だったのだ。隠し(ぎょく)と言うべきか。


 トールは、急いで仰向けになる。

 そして、両膝を鼻の近くまで曲げてから、足を伸ばす弾みで尻を上方向に跳ね、全身を起こした。

 いわゆる、跳ね起きである。


 そして、イヴォンヌの方へ振り返る。

「イヴォンヌ! 残りのアイテムを全部渡して!」

 彼女は、背負っていたリュックごとトールへ放り投げた。

 彼は、数本の水薬(ポション)を残して、リュックを彼女へ投げ返す。

 そして、ピアスを装着し、1本の水薬(ポション)以外は、自分のポケットへしまった。

 ピアスは、1分間、相手に幻覚を見せる魔法のアイテムである。


 彼は、水薬(ポション)の小瓶の先端を歯で抜いて、その神秘的な濃い青色の小瓶をくわえた。

 これは、水族館の部屋でジャクリーヌから教わった、水薬(ポション)を補給しながら戦うやり方だ。


「行くぜ!」


 彼は、小瓶をくわえたまま長剣を握り、自分の分身が無数にいる状況をイメージする。

 これが、正気を失って野獣となった相手にも見えるはずだ。

 ただし、1分間。


 野獣は、左腕の回復を待っていたが、突然、床に百人以上の小さな少年が剣を振りかざして突進してきたのに仰天した。

 幻影を見せられているのは明らかだったが、どれが本体か区別が付かない。

 全員が鬨の声を上げて襲いかかる。


 野獣は、右腕を突き出し、三角形の魔方陣を出現させる。

 そして、突風を右に左に乱射する。

 だが、実体には当たらない。すべて、偽物だ。

 足下に群がる少年を踏みつけたり、蹴ったりするが、これまた偽物だ。

 無数の幻影に翻弄され、混乱する。


 興奮して我を忘れる野獣の頭の上付近から、「こっちだ!」と声が掛かる。

 野獣は正面を向いた。

 眼前に、宙を浮いたトールが、長剣を、もう振り下ろしていた。


 バリバリバリ!


 野獣の額の宝石は、無数のターコイズブルーの破片となって宙に散乱した。


 同時に、ピアスの効果が消えてトールの分身は霧散し、実体だけが床に着地した。

 彼は、空になった小瓶を後ろに放り投げ、ニヤリと笑った。


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