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僕と幼馴染みと黒猫の異世界冒険譚  作者: s_stein
第三章 魔王討伐編

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233/369

第233話 魔王の反撃

 扉の外で続いている攻撃音や勇ましい声は、巨大で厚い扉に阻まれ、遠くで起きている争乱のように聞こえている。

 そんな防壁のような扉を前にして、魔王(サタン)はジャクリーヌ達に背を向けたまま立ち尽くす。


 想定外の攻撃に混乱しているのか?

 否である。


 マントの裂け目も、肩や足の傷も、みるみるうちに消えていく。

 自己治癒の魔法だ。

 この回復を待っていたのだ。


 魔王(サタン)は、時計回りに体を回して、ジャクリーヌ達に正面を向ける。

 すかさず、右手を前に突き出して、黒い肉厚の手のひらの先に、金色に輝く巨大な三角形の魔方陣を出現させた。

 三角形の一辺は、5メートルはあるだろう。

 その三角形の3つの頂点には、丸い小さな魔方陣が組み合わされている。

 トール達異世界転生組六人は、初めて見る形とその大きさに驚愕した。

 その時、魔方陣がフラッシュのように輝いた。


 ゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオー!


 空気が揺らいで見えるほどの強烈な突風が魔方陣から出現し、ジャクリーヌ達十三人と老人達九人を一度に吹き飛ばす。

 全員が、嵐に飛ばされた小枝のように転がり、エントランスの壁に激突した。


 次に、魔王(サタン)は、右手を引っ込めて左手を前に出した。

「まずい!! 奴の必殺技だ!! 全員、あたしの後ろに隠れろ!!」

 ジャクリーヌが大声を上げて前に出て、左手で自分の後ろを指し示した。


 倒れていたトール達ピカール魔法組合(ギルド)組は、彼女の背後へ転がり込む。

 魔王(サタン)の左手のひらの先に、金色に輝く巨大な三角形の魔方陣が出現した。

 老人達も這いつくばるように背後へ入る。

 その時、魔方陣がフラッシュのように輝いた。

 同時に彼女は、両手を前に突き出し、「防御(デファンス)!!」と叫んだ。


 バリバリバリバリバリ!


 稲妻のような形状の太い光線が、轟音とともにジャクリーヌ達を襲う。

 彼女が半球状に張って全員を覆った防御結界は、その攻撃を果敢に食い止めた。

 ところが、その光線は一時の雷ではなく、大電流のように間断なく続く。

 しかも、威力がさらに増していく。

 彼女は右足を前に出して、腰を少し低くし、歯を食いしばってこれを防ぐ。

 しかし、顔面が真っ赤になり、腕が、足が小刻みに震えた。


「これは、一人では持ちこたえられん!」

 老人の一人が立ち上がり、ジャクリーヌの右横に立って、同じ姿勢を取った。

「わしも行くぞ!」「わしもだ!」

 次々と老人が立ち上がり、彼女の左右に分かれ、全員が防御結界の支えに入った。


 しかし、魔王(サタン)は、さらに光線を太くし、結界の前半分を覆うほど力を強めた。

「「「ぬおおおおおおおおおおっ!!!」」」

 老人達も、顔を真っ赤にして、小刻みに震えながらこれに耐える。


 これでは、結界が破られるのは、時間の問題だ。

 全員に緊張が走る。

 とその時、軍用ゴーグルをつけたヒルデガルトがトールへ近づき、背伸びをして耳元で囁く。

「魔力の供給源がわかった。あのネックレスにある紅、金、(みどり)の3つの(ぎょく)。あれを壊せばいい」


 トールは、はたと膝を打った。

「イヴォンヌ。ファンデーションとブレスレットをくれるかな?」

 ファンデーションは、1分間、自分が透明になれる魔法のアイテム。

 ブレスレットは、1分間、瞬発力を上げるアイテムだ。


 イヴォンヌからそれを受け取ったトールは、ジャクリーヌに大声で問いかける。

「マスター! 結界の右側を一時的に開けられますか!?」

「できるが、何をする!?」

 ジャクリーヌの声は、苦しそうだ。


「あいつの魔力の供給源を断ちます!」

「やれるのか!? 奴は、そこに誰も近づけさせないぞ!」


「任せてください! 僕が『ソーティ!』と合図したらすぐ開いて、(アン)(ドゥ)(トロワ)のタイミングで結界を元通りに閉じてください!」

「わかった!」


 トールは、右腕にブレスレットを装着し、長剣の柄を握った。

 そして、左手を使って顔にファンデーションを塗った。

 彼と長剣は、瞬時に透明になった。


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