第231話 開かれる宮殿の巨大な扉
部屋全体の激しい揺れが収まると、魔王が右足を降ろして、さらに嗤う。
「これで、お前の建物は瓦礫になったな。寝るところがなければ、ここの地下牢を貸してやっても良いぞ」
そう言い残すと、おもむろに立ち上がった。
それだけの動きで、周囲に風が巻き起こる。
天井にぶら下がるシャンデリアの下で、角がこすれた。
ということは、背丈は22~23メートルはあるだろう。
「この宮殿は、東西が300メートル、南北は200メートル、高さは30メートル以上ある。どうだ、凄いだろう? いずれ、ここを核として増築し、大きな城にするつもりだ。そして、ガルネを城下町として作り替える。そろそろ町も制圧された頃だから、外の様子を見に行くとするか」
魔王は、地響きを立てながら、左方向へゆっくりと歩み始めた。
すると、左側の壁がひとりでに開き、その向こうにエントランスらしい空間が見えた。
その先に魔王が通れる高さの巨大な扉がある。
宮殿の玄関なのだろう。
地下にあった魔界の扉など比べ物にならないほど大きい。
そこを開けて外を見るらしい。
ジャクリーヌ達は、彼の後ろを付いていく。まるで、おもちゃの子ネズミのように。
扉の両脇にあるステンドグラスのような小窓から、光が漏れていた。
それが一筋の線となり、床を走る。
彼はそれを見て、眩しそうに目を細め、両手を広げた。
「外は明るすぎるようだ。深い闇よ」
すると、漏れていた光がたちまちのうちに消え、外から雷鳴が聞こえてきた。
黒雲垂れ込める様子が、その場にいた全員の目に浮かんだ。
「これでよし。扉よ、開け」
すると、巨大な扉が真ん中から割れて、ギギギギギギギギギギーッと重量感のある音を立てながら、ゆっくりと内側に向かって開いた。
少しずつ見えてきた空は、昼過ぎというのに夕方のような暗さ。
時折、閃光が走り、遅れて雷鳴が轟く。
その下で、燃える建物の炎がちらつく。
魔王は、地響きを立てて前進し、外へ一歩足を踏み出した。
「見よ。お前の建物も、その周りの建物も、跡形もなく崩れ去った」
奴はそう言うが、宮殿が地面より高く盛り上がっているせいか、瓦礫の山が見えない。
ジャクリーヌ達の目線からは、被害に遭っていない建物の上半分しか映らないのだ。
「もっと燃えろ。炎よ、町を焼き尽くせ。ガルネは、このわしが再建するのだ。ハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!」
とその時、遠くから、ウワアアアアアーッと喚声とも喊声ともつかぬ声が聞こえてきた。




