表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
僕と幼馴染みと黒猫の異世界冒険譚  作者: s_stein
第三章 魔王討伐編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

230/369

第230話 足下に埋まる永遠の宮殿

「ジャクリーヌ・ピカール。またお前に会うとはな。四年前に、お前は恐怖におののき、尻尾を巻いて逃げたが、その際に落とした物でも拾いに来たか?」


 魔王(サタン)の低い声は、部屋中の空気と聞く者の全身を震わせる。

 巨大なウーファーを通じて鳴り響いているかのようだ。

 ジャクリーヌは、相手をキッと睨んで仁王立ちになり、胸を反らす。


「黙れ! 今日こそ、貴様を倒す!」

「その薄っぺらい剣でか? わしの右腕に、傷一つ付けなかったではないか? また折れるぞ」


「フランク帝国最高の武器職人が鍛え上げた今度の剣は、絶対に折れぬ!」

「物事に『絶対』はない。それに、昔と違って、わしは戦いを好まぬ。まあ、平和的な話し合いをしようではないか。……それはそうと、乱暴者の小僧がわしの大切な部屋へ汚い土足で上がり込み、よくもまあ、穴を開けおって。先にそれを直さないとな」


 魔王(サタン)は左手をヌッと伸ばし、丸太のように太い人差し指を、くいくいっと曲げ伸ばしした。

 すると、メキメキと音を立てて、陥没していた黄金の床がひとりでに下から持ち上がっていく。

 たちまち、床が元通りになった。


「今更、話し合いだと!? 平和的に!? 笑わせるな! 問答無益だ! 覚悟しろ!」

「血気に(はや)る者、命短し。悪いことは言わん。矛を収めよ」


「邪知暴虐の貴様には言われたくない! 今度こそ、首を()ねてやる!」

「話し合いも拒否か。わしが下手に出れば、いい気になりおって。これでは話にならん。……仕方あるまい。手始めに、お前の建物を破壊してやる」


 魔王(サタン)は、顎をなでていた右手を高く上げた。

 すると、突然、地震に襲われたような揺れが始まった。


「脅しには屈せぬ!」

「もう遅い。今、この部屋を含む宮殿全体が、地下から地上へ向かって動いている。魔界の永遠の宮殿が、地上に姿を現すのだ。ところで、この真上に何があると思う?」


「今まで歩いてきた距離と方向から判断して、墓場の外にある空き地だろう」

「ふふん。騙されおって。あの扉からここまでは、時空が曲がっておってな。といっても、ルテティアとヴェルサイユへの抜け道ほど曲がってはおらぬが」


「なら、この上に何があると言う!?」

「お前の建物だ」


「??」

「聞こえぬか? お前がわしとの戦いに完敗し、悔しさのあまり、壁に穴を開けた酒場。それが、この真上にあるのだ」


「いつの間に!?」

「お前が酒場を買い取ってすぐ、わしは酒場の地下にこの宮殿を作ったのだ。お前は四年間、わしの宮殿の真上で生活していたというわけだ。灯台もと暗しだな」


「……」

「愉快愉快! お前のその顔で、酒がいくらでも飲めるぞ! ハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!」


 魔王(サタン)は、腹の底から呵々大笑(かかたいしょう)した。

 笑い声に混じって、部屋の上でボコボコと何かが割れるような音がする。

 続いて、ガラガラと何かが崩れるような音が降ってくる。


 ジャクリーヌの魔法組合(ギルド)の建物は、ガルネの中心街にある。

 崩れる音を立てたのは、その一帯の建築物だろう。


 永遠の宮殿は、ガルネのど真ん中に出現したのだ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ツギクルバナー
cont_access.php?citi_cont_id=229234444&s
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ