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僕と幼馴染みと黒猫の異世界冒険譚  作者: s_stein
第三章 魔王討伐編

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第229話 魔王出現

 その場にいた誰もが、(ブラン)ファミーユの真実を知り、愕然となった。

 そして、筆舌を超越する哀切な思いに包まれた。


 魔王討伐を依頼した相手が急に敵のように振る舞ったのは、よく考えてみれば、おかしな話。

 なぜ、気づけなかったのか?

 魔王(サタン)の肩を持つ発言をし、こちらを魔法で攻撃してくるので、ただただ憎き敵を叩く、という怒りの感情に突き上げられ、応戦してしまった。


 皆は、今日起こった味方との一連の戦いを思い返し、心をさらに痛めた。

 だが、トールだけは、最後のフランソアとの戦いを振り返ったものの、それ以上の後悔をやめてしまった。


 正気に戻ったのだ。

 そして、気づく。

 最後まで計算し尽くされた手口だ、と。

 このままでは、魔王(サタン)の思い通りに心が操られる。


『後悔せよ? ふざけるな! そうやって戦意を喪失させるのが、貴様の目的だ!』

 トールは、頭の中で力強く反論する。

 そして、攻撃に備えて、長剣に魔力の蓄積を開始した。


『ほほう。味方を手に掛けても平気な奴とは、恐れ入る。おい、皆の者。ここにとんでもない奴がおるぞ』

『そうやって仲間の離反を誘う手口は、見え透いている! 我ら討伐隊は、(ブラン)ファミーユの(かたき)を討つ! 覚悟しろ!』


『あな恐ろしや。小僧。お前は、慈悲の欠片もない、冷酷な悪魔の心の持ち主ぞ』

『極悪非道の罪業を重ねる、魔界の首領め! 塵となれ!』


 トールは、長剣を高く振り上げた。

 白いドラゴンへ、剣圧による衝撃波をぶつかるためだ。

 ところが、突然、ドラゴンが光の玉に包まれてしまう。

 目の前に太陽が落ちたような明るさと、溶鉱炉のような熱気に、全員が壁際まで退却した。


 その光の玉は、瞬時に玉座の上へ移動する。

 すると、その玉がみるみるうちに大きくなり、13メートル以上もの大きな玉座を包み込んだ。


 トール達は、薄目も開けていられないほどの輝きに、眼底が焼け焦げそうになる。

 手のひらで隠しても、皮膚から透けて見えそうだ。

 なので、腕でこの強烈な光を隠さざるを得なくなる。


 やがて、光が消えた。

 トール達は、恐る恐る腕を降ろした。

 だが、その腕は、口の付近で止まった。

 恐怖のあまり、眼球が飛び出る。


 なぜなら、玉座の一番上の位置を超えて、巨大な野獣の顔があったのだ。

 頭の上まで15メートルは優にあるだろう。


 猛牛のような角。

 ドラゴン、イノシシ、オオカミの特徴が混ざったような、醜く、どす黒い顔。

 額にターコイズブルーに輝く菱形の宝石。

 金色の眼。縦長の瞳孔。

 口元で突き出る長い牙。

 顔を覆う、黒に近い褐色の長い毛。


 顎に触れる右手へ目を転じると、黒褐色の長い毛に覆われた手の甲。

 指は獣のそれではなく、人間のように五本の指を持つ。

 その、どす黒く太い指がゆっくりと動き、顎をなでる。

 動きに合わせ、大きく婉曲する鉤爪が、黄金の光を反射する。


 右手の肘は、曲げた右膝頭の上。

 その右足の先は、左大腿部の上。

 いわゆる半跏趺坐(はんかふざ)の姿勢。

 クロエ・ドゥ・ラプラスが幻影魔法で見せた偽トールの姿勢は、これを模したのだろう。


 野獣は、黒に見える紺色、いわゆる『勝ち色』のマントを纏い、贅を尽くした装飾と金の刺繍を施した服で身を包む。

 異世界の全ての王が最高の衣装を披露したとしても、これほど豪華なものは二つとあるまい。

 装飾品の中で、一番目に付くのは、ネックレス。

 下部に、左から紅、金、(みどり)の3つの光る(ぎょく)がついている。

 そこから、痛みを感じるほど、強力な魔力が放出されている。


 この野獣こそ、魔王(サタン)の真の姿。


 その全身をくまなく視線で追ったトール達は、縦長の瞳孔の奥にある漆黒の闇から発せられた視線で、体の芯まで射貫かれる感じがした。

 何という威圧感。

 目を合わせるだけで、窒息しそうになる。


 この沈黙を最初に破ったのは、魔王(サタン)だった。


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