第222話 扉の向こうに魔王がいる
トールは、黒猫マックスに未来予知を依頼した。
この扉を開けていいかどうかを調べるためだ。
黒猫マックスは、やや考えて、首をかしげる。
「扉を開けると、この先でフランソアと獣が二匹待ち受けているのは見えるが、魔王の気配を感じるけど、姿が見えない。いるけどいない、ってとこだな」
「おいおい、どっちだよ?」
トールは、黒猫マックスの頭をポンと叩いて苦笑する。
「小僧! 痛いじゃないか! このスーパー、ハイパー、ゴージャスなニャン太郎様は、もう少し時間が経たないと、先が読めんのだ」
「ニャン太郎じゃなくて、マックスでしょ?」
「マックスは、未だに慣れんぞ。……まあ、とにかく、扉の向こうに魔王がいるのは確かだな」
「そういえば、エミールは魔王がお茶を飲んでいるって言っていたよね」
「ああ。でも、俺の予知には、気配はあれど、フランソアと獣が二匹しか見えないのだ。透明なのか、何か別のものに姿を変えているのか、今はわからん」
「なるほど。心して事に当たらないとね」
いよいよ、最高幹部と最終敵との決戦であるとわかり、全員が水薬でフル回復した。
ここで、しんがりの応援組九人が、ジャクリーヌ達を心配しにやってきた。
彼らも水薬を受け取るが、先頭にいた老人がジャクリーヌに向かって、しわがれた声で問いかける。
「敵は全員町に行ったらしく、いつまで待っても、扉の前に敵は来ない。わしらも、この先の戦いを手伝わせてはくれないか?」
ジャクリーヌは老人の方を向いたまま、背後の扉に親指を向ける。
「扉をくぐった途端、フランソアの一撃で九人が倒されると思った方がいい。それでも来るか?」
「ジャン=ジャック・ポアソンの奴めが、わしら年寄りだけ残しよって、腹が立っておるんじゃ。お前さんのためなら、粉骨砕身、何でもするさ」
「恩に着る」
「それはそうと、そこのお嬢ちゃん。びしょ濡れじゃないか? わしの魔法で乾かしてやろう」
老人はヒルデガルトに右の手のひらを向けると、緑色の柔らかい光が彼女の全身を包んだ。
すると、瞬く間に、彼女の服も全身も乾かしてしまった。
老人は、その回復魔法に驚く彼女を見てにこやかに笑い、「今度、教えてあげよう」と約束した。
さあ、準備は整った。
全員が一斉に立ち上がり、決意を新たに扉の方を向いた。




