第217話 地底の罠
現れた廊下は、打ちっぱなしのコンクリートの壁。
天井までの高さは8メートル以上、幅は5メートル以上。
ちょうど、魔界の扉の大きさだ。
それが、奥の方で、床にパックリと口を開けている。
どうやら、そこに下り階段があるらしい。
ジャクリーヌが、一人で扉の向こうへ偵察に行った。
長い下り階段を降りてみると、そこに、これまた長い廊下があった。
天井までの高さは3メートル、幅は5メートル。
照明用の電球が天井に埋め込まれていて、中は割と明るい。
ガルネはまだ一部にしか電気が通っていないので、魔力の供給によるものか。
廊下の突き当たりに、濃い茶色の扉が一つ。
それが、遠近法の効果で異様に小さく見えるので、かなり距離が離れているようだ。
ジャクリーヌはいったん引き返し、応援組九人の老人を、開いた扉のそばで待機させた。
それから、彼女を先頭に、武装した十三人は適度に散らばりながら、下り階段に吸い込まれていった。
一行は、地下の廊下で慎重に歩を進めて、廊下の真ん中付近にたどり着いた。
50メートルも歩いただろうか。
とその時、突き当たりの扉が音もなく開いた。
同時に、彼らの最後尾にいた魔術師ブリジットの後ろ10メートルの所に、天井からコンクリートの壁が落ちてきた。
その落下したときの重量感のある音と振動から、分厚い壁が落ちてきたようだ。
ブリジットは壁に駆け寄り、拳で何度も叩くが、鈍い音しか返ってこない。
退路は断たれた。
すると、扉の中から、上から下まで真っ白の制服を着た男が、ゆっくりと姿を現した。
ジャクリーヌは舌打ちをし、「よりによって、あいつがここで来やがったか。最悪だ」と吐き捨てるように言った。
男は、50メートルほど離れていたのに、瞬時にジャクリーヌの3メートル手前まで移動した。
2メートルは超える長身で、痩せ細った体型。金髪紫眼。面長で、彫りがかなり深く、鼻が普通の人の倍以上高い。
男は、口角をキューッとつり上げて「おやおや。全員知らない顔じゃないね。でも、キチンとご挨拶しよう」と言いながら、胸に手を当てて軽く会釈した。
「我が名は、エミール・ドゥ・ルジャンドル。ルジャンドル公爵家次男。白ファミーユの序列二位。どうぞ、お見知り置きを」




