第212話 出口の先で見たものは
いよいよ、彼らは横穴の出口に近づいた。
暗闇に目が慣れているので、そこから差し込む光が弱くても、眩しく感じられる。
目を細めてみると、松明を前に人が大勢集まっているのが見えた。
その集団は、ジャクリーヌが足音を大きく立てて出口に向かっているのに気づいたらしく、一斉に彼女の方を向いて剣を構える。
しかし、ジャクリーヌは一切かまわず、彼らに向かって「よう」と左手を挙げながら、横穴から飛び出した。
出迎えた集団が、どよめいた。
彼女に続いて、警戒しながら横穴を出たアンリは、辺りを見渡した。
そして、額に手を当てて天を仰ぐ。
「ま、マジかよ!」
なんと、目の前にいるのは、応援に駆けつけていた魔法組合のメンバーではないか!
彼らは目を白黒させながら、次々と横穴から出てくる十一人を出迎えた。
出迎えを受けるジャクリーヌ達の目の前には、時間が逆戻りしたような光景が展開する。
荒削りの壁に松明。
開かれた魔界への扉。
地下から湧き上がるマグマの光。
アーチの橋。
その先で口を開ける漆黒の闇。
「おいおいおい! 振り出しに戻ったなんて、冗談だろ!」
アンリは両手を挙げて、へなへなと腰を下ろした。
ジャクリーヌは、彼の肩をポンポンと叩く。
「奴らに一杯食わされたってことさ」
「一杯食わされたんですかい?」
「そう。扉が開いて、必死に防御すれば、その先に魔王がいると思うだろ。」
「確かに」
「その心理を利用されたのさ。まんまと、別の通路に誘導されたよ」
「じゃあ、本物の通路があるんですかい?」
「ああ。本物の通路は別にある」
「さっきの途中で、道を間違えたんじゃあ?」
「それはない。なんなら、もう一度あそこへ入ってみるか?」
「滅相もない! ……で、これから、どうしやす?」
「ヒルデガルトを待つ」
彼女はそう言って、自分が通ってきた横穴の方に振り返った。
とその時、別の横穴から、小さな黒い影が鉄砲玉のように飛び出してきた。




