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僕と幼馴染みと黒猫の異世界冒険譚  作者: s_stein
第三章 魔王討伐編

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第211話 ループする通路

 辺りに散らばるオートマタの残骸を見渡したジャクリーヌは、満面の笑みを浮かべてトールとハイタッチをした。

 数多の鋼鉄のオートマタどもを、たちまちのうちに、単なる赤い鉄くずと化したトールの剣。

 彼女は、その実力を改めて実感した。

 さすが、帝国一の武器職人が鍛えた優れた剣である、と。

 これなら、あの魔王(サタン)相手でも刃こぼれがしない、と。


 ジャクリーヌは、茫然自失して立ち尽くすマリアンヌに歩み寄った。

 自身が全力を挙げて製作したオートマタが、たった数分で、すべて破壊されたのだ。

 彼女は、その事実を突きつけられ、地面にへなへなと座り込んだ。

 そして、最高傑作のジジ人形の無残な姿に目を落とす。


「さあ、マリアンヌ。貴様のおもちゃは、全て破壊し尽くしたぞ。これ以上の無駄な抵抗はやめて、大人しく投降しろ」

 ジャクリーヌは、敗者の顔に剣先を向けて、降伏を迫った。

「投降しろ? それは無理ね」

 顔を曇らせてもまだ美貌が余りある彼女は、力なく首を左右に振った。


「まだ抵抗する気か?」

「しないわよ。全部壊されてしまったから、これ以上、何もできやしない」


「じゃあ、なぜ投降が無理なんだ?」

「敗北すると消えることになっているから」


 マリアンヌは、ため息交じりに謎の言葉を口にして、長身の背中を丸めた。

 すると、彼女は煙のように消えていった。


 ジャクリーヌもため息をついて、肩をすくめた。

「敗北すると消える? 連中は、一体どうなっているんだ?」


 その時、ヒルデガルト達が「「摘出完了!」」と声を揃えて喜びの声を上げた。

 それを聞いたジャクリーヌは、ヒルデガルトの所へ駆け寄り、安堵の胸をなで下ろした。


 彼女は、敵に時間を与えないため、まだ治療中のヒルデガルト達を含めた五人にジャック、ルイーズ、ブリジットの護衛三人をつけて、残りの十一人で出発した。


 彼らは警戒しながら、薄明かりのこぼれる扉をくぐり抜ける。

 すると、そこは横穴だった。

 高さは2メートルほどで、穴はほぼ円形をしている。

 ところどころ、松明が置かれていたが、途中からそれもなくなり、真っ暗になった。

 一行は、壁を触りながら、慎重に歩みを進める。

 トール達が、強化魔法で光を纏っているとは言え、提灯や松明代わりにはならないので、どうしても手探りの行軍となる。


 どうやら、この横穴は、右へなだらかにカーブしているらしいことがわかった。

 壁を触りながら歩くと、まっすぐではないのだ。

 このカーブは、いつまでも続く。

 まるでループでもしているかのように。


 途中、割と急な上り坂と下り坂があったが、それ以外はほぼ平坦な道のりだった。

 しかし、このカーブはどこまで続くのだろう?

 これは罠なのか?

 先頭を行くジャクリーヌの顔は、焦りの色が隠せない。


 しばらく進むと、右斜め前から薄明かりが見えてきた。

 光の色と揺らめき具合から、松明のようだ。

 さらに、ザワザワと話し声が聞こえてきた。


 ジャクリーヌは、その会話に聞き耳を立てる。

 しばらく耳を澄ましていた彼女だが、突然、小声で笑い出した。

 アンリは心配になって、笑いが止まらない彼女の肩越しに声を掛ける。


「マスター。何がそんなにおかしいんですかい?」

「ああ、アンリ。聞いて驚け。この先に知り合いがいる」


「知り合い? ま、まさか、(ブラン)ファミーユ!?」

「いいや、味方だ」


「味方? 敵に捕まったんですかい?」

「行けばわかる」


 ジャクリーヌは笑いのスイッチが入ったまま、ずんずんと歩幅を広げて歩いて行く。

 アンリ達は、それまで慎重だった彼女が、突然、唐突な行動を取る理由が全く理解できなかった。

 しかし、暗闇に取り残されるのは御免なので、慌てて彼女の後を追った。


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