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僕と幼馴染みと黒猫の異世界冒険譚  作者: s_stein
第三章 魔王討伐編

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第209話 赤いオートマタの群れ

 ジジは小さな親指で、器用に拳銃の撃鉄を起こした。

 そして、ジャクリーヌに二挺の銃口を向け、引き金を引く。

 怒りに燃えるジャクリーヌだが、冷静に相手の動きを見て、刀身を銃口に向けて盾とした。

 そして、発射された2つの弾丸を弾き飛ばす。


 彼女は、それまでのジジの動きを観察して、気づいたことがある。

 短い親指だから、拳銃の撃鉄を起こすのに時間が掛かるのだ。

 つまり、そこに隙ができる。


 ジジが撃鉄に親指を掛けた。

 その瞬間、ジャクリーヌは一気に踏み込み、間合いを詰めた。

 柄を握り直さず、手首の向きを変えるだけで、剣の刃先を相手の首に向ける。

 そして、剣を素速く振る。

 首を()ねた手応えが、柄を通して彼女の手に伝わった。

 それは、肉よりも固いものを斬った衝撃。


 切断されたジジの頭部が宙を舞い、ゴトンと音を立てて地面に転がる。

 重量感のある頭部。

 血しぶきを上げない首。

 ジャクリーヌは、ユラユラと揺れる首の切断面から、機械仕掛けの部品のようなものを見た。


 しかし、詳しく調べている暇はない。

 赤い人影が、重量感のある足音を立てながら、目前に迫ってきたのだ。


「誰でもいい! 運ぶのを手伝え!」

 ジャクリーヌはそう叫んで、マリー=ルイーゼを抱えて後退する。

 トールはシャルロッテを抱え、アンリは燃える剣と日本刀を抱えて後退した。


 赤い人影は、討伐隊の列を楕円形に取り囲む。

 数にして、ざっと五十体以上。

 全員が白い歯をむき出して笑っているも、髪はおろか、目も鼻も耳もない。

 上から下まで真っ赤に塗られた、歯だけの『のっぺらぼう』だ。

 奴らは剣を構えているが、取り囲まれている者が剣を向けているからか、ボスの指示を待っているのか、それ以上は踏み込んでこなかった。


 包囲の中心に運ばれたマリー=ルイーゼとシャルロッテは、意識がなかった。

 被弾したのは魔弾だったようで、腹部の弾丸痕から紫色の邪気が吹き出している。

 二人の治療は、ヒルデガルトと、回復魔法専門の魔術師(マジシャン)ルイーズ=アンジェリークとシルヴェーヌが担当した。


 赤い人影とジャクリーヌ達が対峙する中、扉の向こうから、高笑いする女が現れた。

 八頭身のモデルのような体型を白いドレスに包む女だ。

 金髪灼眼。彫りが深く、均整がとれた顔立ち。

 誰もが絶世の美人と称えるであろう。

 だが、笑い方が下品。

 女は、「オートマタのみなさん、ご苦労様」と、打って変わって上品な声を上げながら、ゆっくり歩み寄ってくる。


 と突然、女は柳眉を逆立てて、走り寄ってきた。

 そして、ジジの頭部を拾い上げ、強く胸に抱きしめる。

「おお……、なんて、かわいそうに……」

 今度は、嗚咽しながら「かわいそうに」を繰り返し、その頭部に頬ずりをする。


 ジャクリーヌは、女に向かって親しそうに声を掛ける。

「よう。マリアンヌ・ドゥ・フーリエ。そいつは、貴様のおもちゃか?」

 すると、マリアンヌ・ドゥ・フーリエと呼ばれた女は、鬼のような形相になった。

「よくも私の可愛い子に手を掛けたわね! この子は、私の最高傑作だったのに!」


「実在する人間に似せて作るとは、趣味が悪いぞ」

「私の技術の高さを証明するには、この方法が一番なの。魔力を動力源とする作品で、ここまで精巧にできたのは、この子だけ」


「もしかして、この赤い奴らも貴様のおもちゃか? こっちは手抜きだな」

「急がされたからよ!」


「それにしても、気合い入れて、ずいぶんと量産したな」

「四年前の戦いで、全て破壊されたので、一から作り直したの。姉さんのせいよ。魔界の雑魚相手に、前線に立たされて、不慣れな戦いで全滅したのは」


「おいおい、雑魚相手に負けるくらいのおもちゃで、幹部相手に戦わせてほしかったとでも?」

「部下のせいにするなんて、最低のリーダー。地獄に落ちるがいいわ! やっておしまい!」


 マリアンヌの号令で、赤いオートマタが一斉にジャクリーヌ達へ迫ってきた。


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