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僕と幼馴染みと黒猫の異世界冒険譚  作者: s_stein
第三章 魔王討伐編

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第197話 水は透明とは限らない

 またもや取り囲まれた者達は、ヒルデガルトの声を聞いて、先ほどと同じく慌ててしゃがみ込む。

 今度は、何の魔法で反撃するのか?

 彼らの期待は高まる。


 ヒルデガルトは、右端にいた魔物達に向かって両手を伸ばした。

 そして、手首から先を、つぼみが開いて花になった形のポーズを取って、魔法名を力強く叫ぶ。


放水(ヴァッサー)(ヴェルファー)! 黄色(ゲルプ)バージョン!」


 すると、彼女の手の先に、直径1メートル以上の黄色に輝く幾何学模様と古代文字の魔方陣が出現した。


 ドオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオン!!


 腹に響く重低音を残して、魔方陣から大型放水車の放水のように大量の水が放出した。

 それがいつもと違う。

 水が、黄色なのだ。

 強烈な黄色の水流は、太い円柱となって空中を直進し、右端の数人の魔物を小石のように吹き飛ばす。

 彼女は、その水流を左方向へ移動させ、左端の魔物まで、2秒間で全員を吹き飛ばした。


 魔物達は、自分が這い出た穴を遙かに超えて、地底の壁付近まで転がっていく。

 中には、絶命したのか、光の粒となって消える者もいた。

 しかし、まだまだ残っている彼らは、全身が真っ黄色になった状態で、ヨロヨロと立ち上がった。


「お嬢ちゃん、よくやった! これで区別が付く! いくぞ、皆の者!」

 魔法組合(ギルド)のメンバーの中にいたマスターらしい老人がそう叫ぶと、全員が鬨の声を上げて立ち上がり、一斉に剣を黄色い魔物に向けて突進した。


「よし! 雑魚は彼らに任せて、うちらは正面突破だ!」

 ジャクリーヌは、再び濃い紫の煙に見える壁の方を向いた。

 しかし、強烈な熱気を放出させる地下のマグマを前にして、足が踏み出せない。

 攻めあぐんでいるジャクリーヌを見たトールは、ここで一つの策を思いついた。


「マリー。例のリボン、出して」


 指名されたマリー=ルイーゼは、その言葉で、トールが何か良い策を思いついたと判断し、軽く頷いた。

 彼女は無詠唱で、五本の指をいっぱいに広げた右手を高く上げ、「魔法の杖(ツァオバシュタプ)!」と叫ぶ。

 すると、右手の先に、黄金色に輝く幾何学模様に古代文字の魔方陣が現れた。

 それから、長くて白いリボンの付いた黒光りする棒が、その魔方陣から生み出されるようにゆっくりと出現する。

 彼女はそれを手にするまでに、トールがどんな策を思いついたのか、気づいた。


「もしかして、このリボンを腰に結わいて――」

「そう。向こうへ飛んで、拳で壁をぶち壊したいんだ。雷じゃ無理。壊れなかった場合、穴へ落下するから、落ちる前にリボンで引っ張って」


「ゴムみたいに、いかないよ」

「じゃあ、その杖を斜め上に伸ばして、上から吊せる? 釣り竿のように」


「無理」

「なら、一か八かだけど、お互い一発勝負でやるかな。つまり、僕が壁をぶち壊せなかったら、思いっきりリボンを引っ張って、こっちまで戻してくれる?」


「うーん……。かなり、リスクが――」

 彼女はそう言いかけて、さっきから自分が否定ばかりしていることに気がついた。

 これでは、トールが思い切って力を発揮できないではないか。

 ダメダメ言うのは、慎重なのではなく、弱気である証拠。


 彼女は自分を戒め、前向きな気持ちに切り替える。

「リスクが高いかも知れないけど、やってみるよ! 任せて!」

「うん。体が折れそうになるくらい、全力で引っ張ってくれていいから。落ちて溶けてしまうよりましだからね」

 彼は、だけど冗談でも落ちないよ、と自信に満ちた顔で笑った。


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