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僕と幼馴染みと黒猫の異世界冒険譚  作者: s_stein
第三章 魔王討伐編

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第195話 扉の向こうは金城湯池

 ジャクリーヌは、剣を頭の右に構え、鋭い切っ先をフランソアの顔へ向ける。

 剣がまるで雄牛の角のようだ。

 そう。これがいわゆる、(ブフ)の構えである。

 彼女は、眉根を寄せ、鷲のように鋭い眼光で敵を射すくめる。


「フン。魔王(サタン)以外は雑魚だ。四年前もそうだっただろう?」

「四年前? 一緒に戦ったあの当時のことかね? 確かに、あの頃の君は強かった。魔王(サタン)様の幹部を斬り捨てても、刃こぼれ一つしなかった。でも、その剣は途中で折れただろう?」


「あれは、アネモネ・ロワのせいではない。あたしが急がせたからだ。剣の鍛え方が中途半端のまま臨んで、一太刀で折れた。だから、あれは、あたしのせいさ」

「その、人のせいにしないところは、褒めてやろう」


「今度のこの剣は、彼女にあの時より格段に強く鍛えてもらったから、決して折れることはない。だから、魔王(サタン)以外は雑魚だ」

「おやおや。自分を基準にものを言っている。リーダーとしては失格だな。仲間の力量の視点に立ってものを言わないと、間違った指示になる、私は(ブラン)ファミーユを雑魚とは認めないが、君には雑魚みたいな相手でも、君の仲間にはちっとも雑魚ではないのだよ」


「そうやって仲間の士気を低下させる作戦だろう? 姑息なやり方だ」

「いやいや、一般論だ。リーダーが自分の視点でものを言い出した途端、仲間がついて行けなくなる。すると、誰もついて来れないから、自らプレイングマネージャーにならざるを得なくなる。……さて、今から、もの凄い数の部下をここに呼ぶが、全部雑魚とは言えない力を持っている。君の仲間には手に負えないはず。さて、君一人で倒すのかね?」


 とその時、白猫ブルバキが「発動されるぜ」と囁く。

 フランソアは、右手を動かし始めた。


「ゴチャゴチャとうるさい! 問答無用! 稲妻(エクレール)!」

 ジャクリーヌが強く魔法名を叫ぶと、彼女の構えた剣の先に輝く魔方陣が出現した。

 そして、そこから横向きの稲妻が、雷鳴を轟かせて発射された。


防御(デファンス)!」

 フランソアは魔法名を叫んで、左手で白猫ブルバキを抱えたまま、すでに動かしていた右手のひらを素速く前に突き出した。

 瞬時に彼の手の先で出現した魔方陣が、稲妻をかき消した。


 さらに、白猫ブルバキが「来るぜ」と囁く。

 フランソアは、右手で指をパチンと鳴らした。


 と同時に、ジャクリーヌは、剣を構えた体勢で飛びかかった。

 しかし、フランソアは瞬時に消え失せた後だった。


 ジャクリーヌは、フランソアが立っていた位置の空気を切り裂き、剣を床に突き刺す。

「畜生! あの猫め!」

「マスター! 怪我は!?」

 アンリが心配そうに彼女の元へ駆け寄り、顔を覗き込んだ。


「怪我はないが、あの畜生猫にやられた! 忌々しい!」

「ああ、あの白猫に先読みされたんですかい? 相手の行動の先が読めるから、仲間だった昔は重宝したのに、敵に回すとやっかいですぜ」


「ああ。そうだな。フランソアとあの猫を切り離さない限り、絶対勝てないな」

「マスター。『絶対』ってのは、やめましょうぜ。マスターにそう言われると、俺ら、勝てる気がしませんぜ」


「すまん」

「じゃ、あの煙の中へ、いざ突入、といきやしょう!」


 アンリは勇ましい声を上げ、濃い紫の煙に向かって前傾姿勢で突進した。

 しかし、ガンという大きな音がして、アンリは目を罰点にし、額を押さえながらよろめいた。

「な、な、なんだこれは? 煙に見えるが、壁かぁ!?」

 マルセルがそばに駆け寄って、その煙を上下左右になでる。

「確かにこれ、煙じゃない。ガラスみたいに冷たいよ。壁の模様が煙のように動いているってこと?」

 二人は、首をかしげた。


 とその時、彼らの足下がグラグラと揺れ始めた。

 それは、床が波打つのではないかと思えるほどで、尋常ならぬ揺れ。

「撤退! 扉の外に出ろ!」

 ジャクリーヌのかけ声で、全員が扉の外へ出た。


 すると、揺れていた床の部分が、どんどん地下へ沈んでいく。

 揺れは止まらず、5メートル四方の穴が、奈落のように口を開けた。

 正面は煙に見える壁。

 左右と上は、煙と同じ色だが、こちらは明らかに壁。

 突入するための足場が失われ、一同は失意に沈む。


 ジャクリーヌ達が、様子を見るため穴を覗き込んだ。

 と突然、10メートルほどの深さの底に、赤と黄色がドロドロに混ざったようなものが一気に流れ込んだ。


 眼底が痛くなるほどの強烈な光。

 肌が焼け焦げるような放射熱。

 彼らはたまらず、後ろへ反り返った。

 すると、全身を揺さぶる振動を伴いながら、ドロドロの塊が上昇してくる。


 これは、マグマだ。


 突入を阻む壁とマグマ。

 魔界の守りは、鉄壁になった。


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