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僕と幼馴染みと黒猫の異世界冒険譚  作者: s_stein
第一章 異世界転生編

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第19話 魔力測定と言語のダウンロード

 ベッドのそばで、青年クラウスは手のひらサイズの水晶玉みたいなものを鞄から取り出して、寝ている相手の右手にそれを握らせた。


 もちろん、寝ている本人はぐったりしているので握力はないに等しく、それを握れない。

 そこで、クラウスが自分の両手で包み込むようにして握らせていた。

 すると、その水晶玉は何かを測定しているらしく、玉の表面に白い文字が浮かんでは消え、また浮かんでは消えていた。


 文字は数を表すと思われるが、アラビア数字ともローマ数字とも似ても似つかない文字だ。

 その文字を精霊ゾフィーが紙に書き写している。


 そして、紙をのぞき込む老人メビウスは、眼球が飛び出るのではないかと周囲が心配するほど目を丸くし、時々異様な早さで白髪をかきむしる。

 その態度から察するに、どうやら水晶玉は少年少女の異常とも思える測定結果を表しているようだ。


 クラウスが水晶玉を手のひらから外すと、今度はもう一人の精霊アンジェリーナが、寝ている相手の右手と握手をして、何かを詠唱する。

 握手をしている間、アンジェリーナはジッと目をつぶって、体が固まったかのように動かない。

 1、2分経過したところで、アンジェリーナは全身の力を抜いて、握っていた手を離す。


 これで彼らの全ての作業は終わりである。


 これらの一部始終を見ていた見物人達が、いぶかしがって口々にクラウスらへ尋ねる。

「あんたら、何してんだい!?」


 クラウスは、決して怪しいことをしているのではない、と顔と両手で表現しようとして、大げさと思えるほど快活に振る舞う。

「僕らは彼らの魔力を調べているんだ」


 見物人達は、ホゥと感心の声を上げる。

 猫族も多少なりとも魔法が使えるが、滅多なことではそれを行使しない。

 彼らが感心したのは、魔力を持っているか否かではなく、魔力をあんな水晶玉を握っただけで測定できることの方であった。


 続けて、握手をしていたたアンジェリーナが、これも自分が嫌疑を受けないようにとの配慮からか、満面の笑みで答える。

「この子らにローテンシュタイン語を教えているの」


 それからアンジェリーナは、「手を握ると、握られた相手にこの国の言葉であるローテンシュタイン語の全ての文字、3万ほどの単語、1万ほどの文例を記憶させることができるのよ」と説明した。


 手を媒介とした一種の『ダウンロード』である。

 これを施された相手は、ローテンシュタイン語の会話に不自由しなくなる。


 実は、先ほどからクラウス達と猫族との会話で使われていたのはローテンシュタイン語なのだが、これでハヤテ達は彼らとの会話が可能になったのだ。

 その実力のほどを試すのは、まだ先のお話であるが。


 説明を受けた見物人達は、愕然とし、畏敬の念さえ感じた。

 自分達が生まれたときから長い年月をかけて親、先生等から教わって覚えた言葉が、その時間に比べると瞬時に等しい時間で精霊先生から習得できるのだから。


 クラウスは四人の魔力を測定し、アンジェリーナは四人にローテンシュタイン語を記憶させた。


 それらの作業を全て確認したメビウスは、村長プンペンマイヤーへ幾ばくかの金貨を渡した。

 なぜなら、ハヤテ達の着ている服は村人の持ち物であるし、それまで世話をしているのだから、服の代金プラス謝礼としてだ。


 プンペンマイヤーはいったんは断ったが、最終的には受け取り、服を供出した家へ金貨を分配した。


 それからクラウスらは、まだ眠っている四人およびハヤテから離れようとしない黒猫の子供を、四人がかりで2台の辻馬車へ運び込む。

 それが完了すると、辻馬車は馬のいななきと土埃を残して、いずこへともなく去って行った。


 そういえば、メビウスもクラウスも精霊達も、正面から向くと普通の人間だが、耳が上に尖っていて、後ろを向くと尻尾があった。

 これは、ローテンシュタイン帝国で最も多い人口の種族である。


 なお、精霊は、たまたまこの種族に姿を変えていたのであって、種族の一員ではないことにご注意願いたい。

 彼女らは、他の種族の姿にも顕現できるのだ。


 連れ去られたハヤテ達の運命やいかに。


   ◆◆◆


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