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僕と幼馴染みと黒猫の異世界冒険譚  作者: s_stein
第三章 魔王討伐編

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第189話 謎の女の子ジジ

 ヒルデガルトを除いて、全員が呆気にとられる中、扉がギギギギギーッと重低音を響かせて、真ん中から割れるようにこちら側へ開き始めた。


「ヤバい! ヤバい! お嬢ちゃん! 何とかしないと!」

 アンリは、扉から魔物が溢れ出るのを想像して、大慌てで再度ヒルデガルトの左腕をつかんだ。

 すると、ヒルデガルトは何を思ったのか、再びボタンを押し始めた。

 今度は、扉がギギギギギーッと音を立てながら奥へ戻っていき、揺れと残響音を残してピシャリと閉まった。

 呆気にとられる皆を前に、ヒルデガルトがボソッと種明かしをする。

「逆に、4、2、5、1、3って押したら、閉まった」


 異世界の連中も、パスワード設定は安直のようである。


 一同が安堵の胸をなで下ろすと、ジャクリーヌが撤収を提案した。

 仮に扉を開けて突入したとしても、その先が罠かも知れないからだ。

 サン=ドニの魔界の扉がそうであることは、情報屋のクリスティーヌ・ベジエから聞いている。

 残りの扉は、ヴェルサイユとルテティア。

 このどれかが本丸への近道のはずだ。


 いったん酒場に戻って作戦を練り直そう、ということで話がまとまり、全員が横穴へ向かった。

 とその時、トールの視界に、一番左の横穴近くにあった岩陰から小さな頭が現れたのが映った。

 その頭がすぐに引っ込んだ。


 誰かいる!


 トールは、ガヤガヤと話ながら歩く集団から一人離れて、素速く岩陰へ移動した。

 すると、何者かが岩陰から頭を出した。

 二人は目が合った。

 黒髪の小さな女の子だ。


 アンリが首を伸ばしてトールの方を見ながら言う。

「おーい、何してんだ、トール?」

「ああ、小さなお客さんだよ」

 トールは、岩陰から頭半分を出している女の子を指さした。


「げっ! 人型魔物!?」

「そんな感じしないけど」


 女の子は、岩陰の横から出てきて、全身を見せた。

 袖がなくてボロボロになったワンピースを着ていて、顔も薄汚れている。

 靴もボロボロで、ほとんどスリッパ状態。

 背丈と顔の感じから、歳は五、六歳のようだ。

 ヒルデガルトは、ずり落ちる軍用ゴーグルを直しながら「その子、人間」と保証してくれた。


 トールは、優しく声を掛ける。

「名前は? どこから来たの? ここで何をしているの?」

 だが、女の子は困ったような顔をして黙っている。

 シャルロッテが「そんな、上から見下ろして、いっぺんに言うから怖がっているでしょう?」と言いながら近づいてきた。


 そして、彼女は女の子の前でしゃがみ込み、目線の高さを合わせてから笑顔で質問する。

「お名前は?」

 すると、女の子は警戒心を解いた様子で答える。

「ジジ。……ジジ・モントルイユ」


「何をしているの?」

「道に迷ったの」


「どこから来たのかな?」

「ヴェルサイユ」


「どこへ行きたいの」

「ルテティア」


 一同は凍り付いた。

 ここガルネとヴェルサイユは、70キロメートル離れている。

 さらにルテティアへは、ここから90キロメートル歩かないと駄目だ。


「お父さんとお母さんは? 一緒にいなかったの?」

「いない。みんな、みんな、死んじゃったの」


 シャルロッテは涙ぐんで、言葉が出なくなった。

 今度はジャクリーヌが近づいてきて膝をつき、同じように目線の高さを合わせて優しい顔で質問する。

「ヴェルサイユからどうやって来たの?」

「そこから」

 ジジは、魔界への扉付近を指さす。


「あの扉の向こうから?」

「ううん、違うの。あの横に小さな穴があって、そこを通ってきたの」


「場所を教えて」

「うん」


 一同はジジに連れられて、小さな穴があるという場所へ向かった。

 彼らは、近づいて初めてわかった。

 穴のそばに岩の塊があり、その陰になって穴が開いていることに気づかなかったのだ。

 大の大人でも、這っていけば中に入っていけそうな穴である。

 ただ、ジジが70キロメートルもこの穴を這って来たとは思えない。

 いったん、ジジを保護することとし、ジャクリーヌは予定通り撤収を宣言した。

 彼女は、扉に動きがあるか否かを監視させるため、使い魔のネズミを三匹残していった。


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