表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
僕と幼馴染みと黒猫の異世界冒険譚  作者: s_stein
第三章 魔王討伐編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

183/369

第183話 魔界への新しい扉

 墓地は町の外れにあり、林に囲まれていて、広さは200メートル四方。

 起伏のない芝生の地面に、正方形の墓石を置いただけの簡単な墓。

 それが、縦方向も横方向も等間隔で、整然と並んでいる。

 目印になるような樹木も、東屋もなく、誰の墓かは上から覗いて文字を読まなければわからない。

 途中の花屋で花束を5つ買った彼女は、何度も来ているのだろう、迷うことなく中央付近の墓石の前に立った。

 魔王討伐で命を落とした仲間の墓だ。

 彼女は、並んでいる5つの墓に1つ1つ献花をした。

 全員が黙祷する頃、日が3分の2も沈み、暗くなり始めた。


 トールは、周囲を見渡しながら、ジャクリーヌに尋ねる。

「扉なんかどこにも見えないから、周囲の林の奥でしょうか?」

 彼女は、首を左右に振る。

「いや。ここだ」


「ここ?」

「そう。もっと言うと、墓石が魔界の扉さ」


「「「「えええええっ!!??」」」」

 ほぼ全員の驚きの声がハモった。

 ジャクリーヌは言葉を続ける。

「尾行してくれたみんなは、『奴らは墓地に入ると消える』と報告したよな? はじめ、見えない扉でもあって、そこから出入りすると思ったが、魔界はこの地下にある。扉は建物みたいに体の正面に向いているとは限らない。地下から這い上がってくる奴は、下から開けるだろう? それに、急に墓石が増えたって、墓守じゃないんだから、誰も気づかない。見てな。そのうち偽物の墓石が開くから」


 彼女はそう言うと、まだ頭を出している太陽の方を向いた。

「もう少しで夜になる。そろそろ動きがあるはずだ。トールと、マリー=ルイーゼ、シャルロッテ、ヒルデガルトはここに残れ。他は、全員墓地の外で待機。戻ってくる人型魔物に気づかれないように、隠れていろ」


 九人が墓地の外へ出たのを確認したジャクリーヌは、腰を下ろして膝をついた。

 端から見ると、墓の前で祈っているようにも見える。

 偽装である。

 トール達四人も従った。


 虫の鳴く声が聞こえる。

 時折吹く風の音が、耳元で亡霊の声のように響く。

 林の奥で、オオカミだろうか、遠吠えがした。


 どのくらい待ったのだろう。

 辺りは、かなり暗くなってきた。

 沈黙に耐えきれなくなったトールは、小声で彼女に話しかける。

「マスター」

「ん? 怖くなったか?」


「なぜ、墓石が開くと確信したのですか?」

「正直に言え。墓地が怖いんだろ?」


「はい。その通りです」

「正直で安心した。その……墓石の話だが、四年前のことを思い出したのさ。あの時、地下の魔界で魔物に追われて逃げる途中、洞窟の上に石版があるのに気づいて。そんなところにツルツルした石版があるなんて、なんか変だろ? しかも、近くに梯子(はしご)まである。ますます怪しい。で、それを使って登って石版を押したら、外に出られたのさ。そしたら、周りは墓場。ここじゃなかったけど。……おっと。動いた。来るぞ」


 トールは、彼女の視線を追う。

 すると、今いる仲間の墓の3列先にあった墓石が、ズルッ、ズルッ、ズルッと用心深く右横にずれていくのが見えた。

 それだけではない。

 その墓石の両側にある2つの墓石も、動いているのである。

 やがて、3つの墓石が大きく右へ移動し、3つの四角い穴が現れた。

 しかし、誰も出てこない。

 気づかれたのか?


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ツギクルバナー
cont_access.php?citi_cont_id=229234444&s
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ