第182話 魔物であふれる町
一方、軍用ゴーグルを着用したヒルデガルト達は、往来で着々と人型魔物を見つけて、アンリ、マルセル、オデットがそれぞれ尾行した。
ヒルデガルトは、四人目も見つけたが、自分で尾行することは命令されていないので、見送った。
それから、道ばたでしゃがんで話し込む三人が全部人型魔物だったり、腕を組んで歩いているカップルが二人ともそうだったりと、意外に潜入していることが判明した。
どうやら、この町は、すでに魔物であふれているようだ。
このことを報告するため、ヒルデガルトは早めに建物へ戻り、マスターへ報告した。
「なるほど。では、昼から店で働いてもらおうかと思ったけど、そんなに往来をうろうろしているなら、ジャック、ルイーズ、ブリジットにも同様に探してもらおう」
そうして、12時にジャック達が戻ってくると、ヒルデガルトと一緒に外に出て、捜索と尾行を開始した。
午後3時頃、ジャクリーヌが一人で切り盛りする店内は、日の高いうちから酒を飲む男達で満席だった。
この中にも人型魔物がいるのだろう、と彼女が思っていると、アンリが早くも報告に戻ってきた。
彼が普通に話そうとするので、彼女は、耳元でささやくように、と伝えた。
なぜなら、店内の客に人型魔物が紛れている可能性があるからだ。
「奴らは、墓地へ行く。そこに魔界への出入り口があるみたいだぜ」
「フン、魔界への出入り口が墓地か。皮肉だな」
ジャクリーヌはさっそく、急用があるからと言って酔客を追い出し、店じまいをする。
その後、尾行を済ませたメンバーが戻ってくると、全員口を揃えて「奴らは、墓地に入って消える」と証言した。
ますます、魔界の扉は、墓地にある可能性が高まった。
彼女は、A級以下の仕事の依頼を済ませた全員が戻ってくるまで待った。
全員が戻ってきたのは、夕方の6時。
夏なので、まだ日は暮れていない。
ジャクリーヌは、トール、マリー=ルイーゼ、シャルロッテ、ヒルデガルトの四人、アンリ、マルセル、オデットのパーティ、ポアソン魔法組合からの応援六人を連れて、墓地へと向かった。
ただし、武装して墓地へ行くと人型魔物に気づかれる恐れがあるので、魔術師が勇者と剣士の武器を隠した。
ジャクリーヌも、魔術師オデットに自分の剣を隠させた。
総勢十四名とは、大げさにも思えたが、彼女は一戦を交える可能性を考慮したのだ。




