表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
僕と幼馴染みと黒猫の異世界冒険譚  作者: s_stein
第三章 魔王討伐編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

172/369

第172話 魔王討伐の巨額報酬

 トールは、だんだん(ブラン)ファミーユが胡散臭く思えてきた。

 彼は、てっきり、彼らが正義感を燃やして魔王討伐の依頼をしてきたと思っていた。

 その正義感に同調して、彼も立ち上がったのである。

 でも、それは、彼が脳内で勝手にこしらえた理由付け。

 よく話を聞いてみると、自分自身が露骨に利用されようとしている。

 笑顔で美麗字句を並べる一方で、腹黒さが見え隠れしている。


 おまけに、彼らを飛び越えて皇帝陛下から直接依頼を受けたいが、できないときた。

 ここまで来て魔王討伐を諦めるわけにはいかないので、彼は仕方なく、この申し出を受けることにした。


 アンリは、震えながらフランソアに質問する。

「ま、前金って、いくらなんだ?」

 フランソアは、アンリをじろりと睨んだ。

 まるで、卑しい身分の人間を見るような冷たい目つき。

 返答も、打って変わって、冷たい言い方になる。

「10ルゥ・ドゥオール金貨で1000枚。つまり、1万ルゥ・ドゥオール」

「「「1万ルゥ・ドゥオール!!!」」」

 異世界転生組の六人と(ブラン)ファミーユの連中を除いて、その場に居合わせた全員がユニゾンで大合唱した。

 アンリは、ますます震えながら言葉を続ける。

「つ、つ、つーことは、成功報酬は10万ルゥ・ドゥオール!!??」

「左様。一応、貴様の頭でも計算はできるのだな」


 トールは、フランク帝国の通貨を知らないので、どれくらい凄いのかがわからない。

 そこで、彼はアンリに笑われるのを覚悟で疑問をぶつける。

「アンリ。10万ルゥ・ドゥオールあったら、どうなるの?」

「お、おい! あのなぁ! よく聞け! 飲み食いと宿屋に泊まるだけなら、一人1日1ルゥ・ドゥオールで十分なんだぜ。つーことは、1年で365ルゥ・ドゥオール。だから、えーと、えーと――」

 ここで、ヒルデガルトが答えをはじき出す。

「一人で、約274年間生活できる。トール。なんとなく、前世の日本円に換算すると、1ルゥ・ドゥオールって1万円っぽい」


「ってことは? 成功報酬10万ルゥ・ドゥオールは?」

「10億円」

「「「10億円!!!」」」

 今度は、ヒルデガルトを除いた異世界転生組五人がハモった。

 そのぴったりの金額から、トールは、つい、前世の某宝くじやスポーツくじを思い出してしまった。


 ここで、アンリが右手を挙げて話に割り込んできた。

「ちょっと、待ってくれ! 男爵(バロン)トール・ヴォルフ・ローテンシュタイン・ドゥ・ルテティア様、……う、舌を噛みそうだ、……そのー、この話を、うちの魔法組合(ギルド)を通していただけませんかね?」

 だが、トールは、ちょっとつれなく突き放した。

「それは、僕じゃなくて、こちらの(ブラン)ファミーユと交渉してよ」


 その後、アンリがフランソアと交渉を始めた。

 フランソアは、魔法組合(ギルド)側の仲介手数料を考慮し、成功報酬の増額をあっさり認めた。

 結論として、マスターかそれに準ずる人物の署名が必要だが、魔王討伐でピカール魔法組合(ギルド)が全面協力することを条件に、魔法組合(ギルド)が後日12万5千ルゥ・ドゥオールを受け取り、トールには9万5千ルゥ・ドゥオールを渡し、前金1万ルゥ・ドゥオールは魔法組合(ギルド)とトールが半分ずつ受け取る、となった。

 結局、成功報酬の総額は、13万5千ルゥ・ドゥオール。

 トールに10万、魔法組合(ギルド)に3万5千である。


 前金1万ルゥ・ドゥオールは、トール達の馬車に積まれた金庫の中にあった。

 フランソアは、その場で書類に魔法組合(ギルド)に関する条項を付け加えて、トール達に書類を差し出した。

 トールは、この世界に来て初めて、書類というものにサインをした。

 アンリは、魔法組合(ギルド)側の署名として、マスターから与えられていた『マスター代行』という肩書きを利用してサインすることにした。


 トールには、前世の金銭感覚で、10億円が手に入るようなもの。

 アンリだって、天から降ってきたような3万5千ルゥ・ドゥオールが、ピカール魔法組合(ギルド)に入るのだ。

 マスターが跳び上がって大喜びする姿を想像し、彼はニヤニヤした。

 二人とも喜び勇んで署名していると、フランソアは「ありがとう(メルシー)」と笑った。

 しかし、その笑顔に隠れるように薄笑いを浮かべたことは、誰も気づかなかった。


 署名がすむと、フランソアは「では、明日、晩餐会にご招待するため、また参ります」と言って、(ブラン)ファミーユの連中と白猫、そして白フクロウのガロアも連れて去って行った。

 後に残された者達は、巨額の成功報酬の話題で持ちきりになった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ツギクルバナー
cont_access.php?citi_cont_id=229234444&s
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ