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僕と幼馴染みと黒猫の異世界冒険譚  作者: s_stein
第一章 異世界転生編

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第17話 怪しい訪問者

 翌朝になっても、ハヤテ達は目を覚まさなかった。


 それにしても、長い眠りだ。

 おそらく、転生の際に多大なエネルギーを使ったからかもしれないが、眠りの呪いにでもかけられたかのように一向に目を開けない。


 猫族の村人は心配のあまり、農作業をそっちのけに看病をし続けた。


 伝説通りなら、神に遣わされた子なのだ。

 大切に扱うのは彼らにとって当然の義務のようになっていた。


 濡れたタオルを額に乗せる。

 薬草を煎じたお茶のようなものをスプーンで口にソッと含ませてみる。

 手先や足先の血の巡りが悪いのかと、もんでみる。

 仕舞いには、神へ祈りを捧げる。


 村人の看病も甲斐なく、ハヤテ達は目を開けない。


 でも、時々、寝返りを打つ。

 その度に、付きそう村人はドキッとしたが、堅く目を閉じたままだ。


 祈りはなかなか届かない。

 むなしく時間が過ぎ去り、昼になった。


 ニャン太郎はどうしていいかわからなくなり、無理矢理起こすため、かみついてやろうかと考えていたちょうどその時だった。


 遠くで馬がヒヒーンといなないた。

 あの声の方向には馬小屋がない。


 看病をしていた人々が一斉に頭の上にある耳をそばだたせ、窓からもドアからも顔を出す。

 彼らの視線の先には、村の入り口からノロノロと入って来た2台の辻馬車があった。


 馬は鼻息を荒げながら重そうに車を引っ張り、車輪は砂利の小石を砕くように踏みつけ、車軸はギシギシと危なっかしい音を立てる。

 御者は馬車に揺られながら、周囲の様子をうかがって、馬車の旅客に報告していた。


 そんな年代物の馬車が、村の適当な広さの空き地に停車しようとしたときは、すでに村人がゾロゾロと集まって、馬車を取り囲み始めた頃だった。


 このような村に交易以外の辻馬車が来ることは非常に珍しいのだ。


 村人全員が、好奇の眼を馬車のガラス窓の奥へ向ける。

 一方、その奥では、出迎えの数が多いことに驚く顔が揺れていた。


 そんな素朴な見物人の視線に出迎えられて、馬車の中から白髪碧眼の老人と黒髪金眼の青年と二人の金髪灼眼の少女が、まるで牢獄から解放されたかのように思いっきり手足を伸ばしながら降りてきた。


 彼らは遠路はるばるこの辻馬車でやってきたのであろう。

 村人を警戒させないために振りまく訪問者の笑顔は、やや作り笑いに似て、疲労感が色濃く漂っていた。


 実は、少女は精霊が人の姿をしたものだが、村人はそんなこととはつゆ知らず、老人の孫くらいにしか思っていなかった。


 男は白いシャツに黒い紳士服を羽織り、精霊は真っ白なドレスを着ていたため、民族衣装以外に見慣れていない村民は、都会のインテリどもが何しにやってきたのだろうか、とザワザワし始める。


 騒ぎを聞きつけた村長が従者を連れてやってきて、馬車を取り囲んだ人垣をかき分けた。

 最前列に出た村長は、訪問客の前に立って帽子を取り、従者を両脇に配置して、威厳を保ちつつ挨拶する。

 以下、彼らの言葉はローテンシュタイン語だが、今までのように日本語と併記すると煩雑なので、通訳した言葉のみ表記する。


「カッツェンブローダ村へようこそ。わしは、ここの村長のプンペンマイヤーと申す」


 すると白髪の老人が、村長なぞ自分と対等だという顔をして頭も下げず、村長に自己紹介する。

「わしは魔法科学研究所所長のハンス・メビウスで、彼は助手のゲオルグ・クラウス。そちらの女性は、左から順番に、アンジェリーナとゾフィー」


 プンペンマイヤーは、こちらは帽子を取っているのに、無帽とはいえメビウスが頭を下げないのでちょっとムッとした。

「で、この村に、何のご用かな?」


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