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僕と幼馴染みと黒猫の異世界冒険譚  作者: s_stein
第三章 魔王討伐編

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第166話 二つのギルド

 トール達に向かって、屈強な男と少し痩せた男を先頭にした六人が近づいてきた。

 よく見ると、屈強な男の後ろに日焼け顔の女剣士(エペイスト)と色白の女魔術師(マジシャン)が一人ずつ付き添うように歩いている。

 痩せた男にも二人の女が付いている。

 三人一組のパーティが二つ。そんな感じだ。


 彼らは、トールと3メートルの距離を置いて立ち止まった。

 屈強な男が、割と軽めの低い声で、感心したように言う。

「お前らか、敵を全滅させたのは?」

 トールは、マリー=ルイーゼ達を指さして答える。

「僕じゃなくて、こっちの仲間三人で、だけど」


「三人で? あの三十人以上を?」

「そう」


「嘘だろ!?」

「嘘じゃないよ」


「いやいや、驚いただけよ。あそこの正直者のデュポン、あの牙が一番長い奴が証言してくれたから、信じているよ。しっかし、すげーな」

「彼女たちに言ってくれないか?」


 すると、男は、シャルロッテの方に向かって、つつーっと近寄り、跪いた。

「おお! 麗しのマドモワゼル! なぜマドモワゼルは、私の前でその女神をも退けるほどのお美しいお姿であらせられるのか。そして、かくも勇敢であらせられるのか――」

 すると、男の後ろにいた女剣士(エペイスト)が、筋肉が盛り上がった腕の先にある拳で、男の後頭部を思いっきり叩いた。

「ちょーしに乗ってんじゃねーよ! この、いかれアンリ!」

「痛ってー! 礼を言ってるだけじゃねーかよ!」

「あのー、あたしじゃないんだけど。やったのは、こっちよ」

 アンリに迫られたシャルロッテが、マリー=ルイーゼ達を指さす。

 すると、アンリが手を揉みながら「え? こちらのマドモワゼル? どうもどうも――」とマリー=ルイーゼに近づいて、再び跪く。


「おお! 麗しのマドモワゼルよ! なぜマドモワゼルは――」

「だから、やめろっつーに!」

「痛ってててー! マルセル、二回目、強すぎるぜ!」

 マルセルと呼ばれた女剣士(エペイスト)は、シャルロッテに向かってすまなそうな顔をする。

「こいつ、アンリ・アダマールって言うんだけど、いつもこんな調子で口説き回るから、気をつけろよ。あ、あたいは、マルセル・ティユー。よろしくな。後ろの魔術師(マジシャン)は、オデット・ルパン。こいつ、無口だけど、怖くないから」

 口調は男みたいだが、マルセルは正真正銘の女である。

 彼女からオデット・ルパンと呼ばれた女魔術師(マジシャン)は、無表情のまま、ぺこりとお辞儀をした。

 トールは、胸が大きいマルセルを前にして、目のやり場に困った。

「それから、こいつらは――」

 とマルセルが他の三人を紹介しようとしたとき、トールの後ろから声が掛かった。


「あらまあ! もう終わってるわね!」


 トール達が振り返ると、六人の女と十数人の群衆が10メートルくらい離れたところからゆっくりと歩いてくるのが見えた。

 跪いていたアンリが、よいこらしょと立ち上がりながら、吐き捨てるように言う。

「来やがったぜ、ブルジョアの魔法組合(ギルド)の連中め!」

 マルセルがそれに言葉を継ぐ。

「しかも、必ず、戦いの後にやって来る。最前線に立ちゃしない」


 六人の女も、どうやら三人組のパーティが二つ合流した形らしい。

 先頭の、お姫様に鎧を着せたような金髪女と、彼女を2分の1のサイズにしたような小さな女はリーダー格のようだ。

 装備の組み合わせは、だいたい、アンリ達のパーティの装備と同じであるが、少し豪奢に見える。


 マルセルが、トールの頭越しに女へ声を投げかける。

「おせーんだよ、ディアヌ・ラプラス! いっつも、終わってから来んじゃんかよ!」

 ディアヌ・ラプラスと呼ばれたお姫様風の女は、口に手を当てて笑いながら答える。

「あら。わたくし達は、町民の皆様の安全を最優先しているからですわ。集会場に逃げ遅れた人たちを全員集めて、今からそこへ向かうところですの。たくさんの人をお守りするため、時間が掛かるのも当然。で、皆様方が敵をやっつけたのかしら?」


「いんや。この子達が片付けた。全員」

「あらまあ。うちのギルドに是非ともほしいわね」


「てめーらには、やらねーよ。こりゃ、うちのギルドと契約してもらうわ」

「それは、ご本人も同意していらっしゃるのかしら?」


「同意? ああ、これから取り付ける」

「あら? でしたら、わたくし達にも平等にチャンスはありますわね」


 話の急展開に、トール達は目を白黒する。

 ディアヌを先頭に六人がゆっくりトールに近づいて、3メートルくらいの距離を取った。

「パーティのリーダーは、そちらの男の子のようね。お名前を伺ってもよろしいかしら?」

 トールは、ディアヌの美貌を間近に見て、緊張気味に答える。

 それで、うっかり勝手な貴族の称号をつけてしまうのだった。


「トール・ヴォルフ・ローテンシュタイン・ドゥ・ルテティア」


 ディアヌは一瞬たじろいだ。

 それは、マルセルもそうだった。

 トールは、左横でシャルロッテが袖を引っ張ったので『ドゥ・ルテティア』を勝手につけたことに気づき、顔が熱くなった。


「トール・ヴォルフ・ローテンシュタイン・ドゥ・ルテティア……」

「はい、そうです」


「ローテンシュタインを名乗れるお方は、王族のみ。もしかして、王族出身のお方でいらっしゃいますの?」

「ええ。ローテンシュタイン帝国第五皇女のアーデルハイト・ローテンシュタインの――」


「いいえ。もうよろしいわ。第五皇女様のお名前を伺っただけで十分。で、フランク帝国での爵位は?」

男爵(バロン)です」


「素晴らしいわ! 是非、わたくしどものポアソン魔法組合(ギルド)へ! 大歓迎ですわ!」

 それを聞いたマルセルが、急に慌てふためく。

「ちょ、ちょっと待て! トール! ……トール、様! 是非ともうちのピカール魔法組合(ギルド)へ! 待ってる! ……お待ちしてます!」


 さあ、困った。

 いきなりのスカウトである。

 トールは、双方を交互に見やる。


「是非ともポアソン魔法組合(ギルド)へ」

「ピカール魔法組合(ギルド)へ来てくれるよな!? ……来て、いただけ、ます、よね!?」


 トールは、しばらく考えてから口を開いた。


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