第161話 新天地への旅立ち
その後、トール達は順調に進級し、年少組四年生を卒業できることになった。
それまで、学校生活で数々の愉快な出来事があった。
たまに事件も起きたが、トールの魔力で全てが解決した。
学校の七不思議の謎にも挑戦し、すべてクリアした。
進級の度に、全員が魔法の腕を上げた。
トールは体力をつけて、潜在能力の95%は楽に出せるようになった。
100%は、ちょっと怖いのでたまに出してみると、暴走して周囲に迷惑をかけるので、自重していたが。
魔力の制御にはまだまだ課題が残るものの、トールを『世界最強』と誰もが認めるようになった。
トールの言葉を借りれば『異世界最強』であるが。
処理班の辛い作業もあった。
魔物の遺体処理は、どうにも慣れなかった。
そんな時は、たまに一緒になるアーデルハイト先輩が、懇切丁寧にやり方を教えてくれた。
一方で、イヴォンヌとイゾルデを除いて、四人は魔物討伐隊に抜擢されて、数々の功績を挙げ、階級も上がった。
二人が抜擢されなかったのは、ローテンシュタイン帝国の部外者扱いだったからで、実力は十分あった。
ここで特筆すべきは、黒猫マックスが、ローテンシュタイン語を覚えたことだ。
日本語を使うことで秘密の会話ができるのは、何かと便利なことだったのだが、「ドウモ オマエラノコトバガ ワカラント フベンダ」ということで、精霊アンジェリーナから教えてもらったのだ。
対価は、一日アンジェリーナと遊ぶことだった。
次の日、トールの部屋に戻った黒猫マックスは、声も出せないほどぐったりしていたが。
これらの物語を語り始めると、それだけで一章は軽く超える量なので、ここでは全て割愛する。
さて、卒業式の日となった。
それは、白フクロウと約束した、旅立ちの日でもあった。
養子として彼らを迎え入れた家族は、初めは悲しんだが、快諾し、旅立ちを祝福した。
『フランク帝国で冒険者として、勇者として名を上げる』
トールの夢に、異世界転生組の彼女達五人プラス黒猫一匹も従った。
六人とも年中組に進級せず、このまま卒業、フランク帝国へ留学、という道を選んだのである。
留学とは、実は名ばかりの口実で、これはクラウスの入れ知恵。
未成年の単独移住禁止を回避するためだ。
実際に彼らは学校へ行くことはなかった。
向かった先は、当然、ギルドである。
さて、トールは異世界の、さらに異国の地で、長年の夢、前世からの夢を叶えようとしている。
彼は、魔界への扉をくぐり、魔王と対決するのであろうか?
また、フランク帝国が彼を招聘したのは、魔王討伐が名目になっているが、本当にそれだけなのだろうか?
罠ではないのだろうか?
冒険を求めて旅立ったトール達は、馬車に乗って国境を越えた。
フランク帝国の国境守備隊の兵士達は、入国者を大歓迎している。
入国手続きは、ほぼフリーパスだった。
そこへ、あの白フクロウが現れ、トール達の水先案内人を買って出た。
馬車は、白フクロウも乗せて発車した。
さっそく、我々は彼らを見失わないように、馬車の後を追ってみよう。
いよいよ、波瀾万丈の第三章、冒険の章の幕が切って落とされる。
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ここまでお読みくださいまして、誠にありがとうございました!
いよいよ、第三章の魔王討伐編が始まります。
第三章も逐次アップしますので、お楽しみにお待ちください。
今後ともよろしくお願いいたします!




