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僕と幼馴染みと黒猫の異世界冒険譚  作者: s_stein
第二章 魔法学校編

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第159話 冒険者と勇者への道

 午後9時。

 トールは、胸をドキドキさせながら、イヴォンヌの部屋のドアをノックした。

 すると、内側からドアが音もなく開いた。

 トールは辺りを窺いつつ、滑り込むように部屋に入る。

 イヴォンヌは、満面の笑みを浮かべて、小声で「いらっしゃい」と彼を迎え入れた。


 トールはささやくような声で質問する。

「同室の女の子は?」

「大丈夫。隣の部屋で、みんなとお茶しているわ」


「魔法はかけないでね」

「ああ、大丈夫よ。あの時のことは忘れて」


「話がある、って、前言っていた僕の未来のことだよね?」

「そう焦らないで」


「外で人の気配がするから、早く聞かせて」

「何も音がしないけど。意外とせっかちさん?」


「いや、気になるんだ。君の話が。僕の未来を、誰かが予知したの?」

「ええ、そうよ。フランク帝国最高の予言者が、あなたの未来を占ったの」


「なんで僕のことを?」

「それは、ハヤテが最強の力を持っているから」


「その前世の名前はもういいよ」

「ゴメンなさい。つい。……トールのその力が正義のために使われるのか否かが、フランク帝国でも話題となっていたの」


「それで、結果は?」

「あなたは、今すぐ冒険者(アバンチュリエ)勇者(エロー)になるという未来が見えたそうよ。ローテンシュタイン語ではアーベントイラーとヘルトかしら」


「へー。そうなんだ。フランク帝国では、そう発音するんだ」

 トールは、目の前がパーッと明るくなったような気がした。

 冒険者(アーベントイラー)英雄(ヘルト)と同じ発音をする勇者(ヘルト)

 それは、この異世界へ来たときからの彼の夢だったからだ。


「ねえ。それで……」

「それでって? 何?」


「今すぐ、私とフランク帝国へ行かない?」

「え? どうして?」


「今、フランク帝国では、魔界への扉が開きかかっていて、魔王が出現しそうなの。たくさんの魔法使いが一丸となって扉を封鎖しているのだけど、それが破れそうなの。それで、あなたの力が必要なの」

「扉を封鎖することに協力するだけでいいの?」


「いや、あなたが来てくれたら、意図的に扉を開いて、魔王とその一派を倒して弱体化させてから再度封印する作戦なの」

「そうなんだ。魔界へ乗り込めばいいのに、何でまた――」


「ねえ、お願い。一緒に来て」

「うーん、そうだなぁ……。それには条件をつけさせてもらうし、その予言者の予言が外れる不名誉になるけど、それでもよければ、行ってもいいよ」


「ホント!? って、どんな条件をつけるの?」

「年少組四年生を卒業したら、その魔王退治に行く」


「え? それでは遅いの! 今すぐに来てもらわないと魔界の扉が――」

「あのね、僕は精霊ゾフィーから聞いたんだ。僕の潜在能力を100%引き出すには、今の僕の体が小さすぎるって。95%引き出しただけで10日間動けなかったのは、それが原因なんだ」


「そうだったの?」

「ああ。僕の潜在能力の数値を見て、みんなは世界最強みたいなことを言うけど、実際はリミッタがかかっているようなものなんだ。この体が小さいことが原因で。だから、年少組四年生の卒業まで待ってほしい。体さえできあがれば、本当に世界、ってか、異世界最強になれるから」


 とその時、窓辺でバサバサと音がした。

 二人はギョッとして音のする方を見る。

 すると、二人の視界に、窓の外で浮かぶ真っ白いフクロウが映った。

 白フクロウは、首をわずかに縦方向に動かしている。

 とその時、二人の頭の中で、低い男の声が鳴り響く。


『よかろう。待ってやろう。その言葉、違えるでないぞ』


 トールは少し驚いたが、白フクロウを見つめながら頭の中で答える。


『いいよ。男の約束だ』


『実に頼もしい。……それとイヴォンヌ』

『はい』


『トールの卒業まで一緒に学校に残れ。それから卒業して、一緒にフランク帝国へ来い』

『わかりました』


 白フクロウは、闇に飲み込まれるように飛び去っていった。

 彼女はトールの手を取って、嬉しさのあまり、涙を流した。


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