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僕と幼馴染みと黒猫の異世界冒険譚  作者: s_stein
第二章 魔法学校編

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第156話 魔力のリミッタの解除

 トールは天井を見上げて、高らかに叫ぶ。


「来たれ!!! 全能の大地の精霊よ!!!」


 すると、彼の足下に、直径3メートルほどの金色に輝く光の輪が現れた。

 それは、上に向かってゆっくりと、筒状に伸びていく。

 光の筒はそのまま上昇し、天井に達して止まった。

 そして、その筒はさらに輝きを増した。


 やがて光は消え、彼のすぐ目の前に、白いドレスを纏った金髪灼眼の女性が現れた。

 大地の精霊、ゾフィーである。


「なんだ、なんだ!? 女の助っ人か? ハーレム王はこれだから――」

 グスタフはそう言いかけて、言葉を飲み込み、立ちすくんだ。

 ゾフィーが振り返り、火を噴くような眼でグスタフを睨み付けたからだ。

 彼女は、右の手のひらをグスタフに突き出す。


「やんのか、てめえ?」

「この世界最強のトールを侮辱する者は、何人たりとも許さない」


「なんだとぉ! 世界最強はこの俺――」

「失せろ、俗物」


 冷たく言い放ったゾフィーの手の先から、この建物全体を破壊しかねないほどの衝撃波が発せられた。

「がはっ!!」

 グスタフは宙を浮き、衝撃波ごと穴の奥へ押し戻され、さらに壁を突き破りながら次々と奥の部屋へ飛んでいく。

 仕舞いには、一番端の部屋の壁を突き破って、城の外へ飛ばされた。

 落下するグスタフの叫び声が消える頃、ゾフィーはトールの方へ優しい顔を向けた。


「緊急事態なのね、私を呼び出すということは」

「はい! お願いがあります!」


「何?」

「僕の魔力には、リミッタが掛かっていますよね?」


「ええ」

「やっぱり、そうだったんだ。……それを外してください! そして、100%の力を出せるようにしてください」


「駄目よ」

「えええっ!? どうしてですか!?」


「あなたの小さな体が耐えられないから」

「そんな……」


「さっきの男くらいの肉体と体力がないと、100%は無理なの」

「最後に体が壊れてもかまいません! 力を、……力をください!!」


「壊れるどころか、死ぬわよ。そうまでして何がしたいの?」

「それは……、それは、さっきの男に時間内に勝ちたいからです! もう時間に余裕がありません! どうか、どうか――」


「待って。勝てばいいのね、あの男に」

「はい!」


「あの男との勝負に、今、あなたの命を賭けるなんて、バカバカしいわよ。95%でも勝てるわ。ただし――」

「ただし?」


「95%を出し切ったら、その体なら10日間は動けなくなるわよ。それでもいい?」

「は、はい!!」


「じゃあ、対価は――」

「あのー、僕からその対価を提案してもいいですか!?」


「え? ……ええ、私が『見合うもの』と認めれば」

「シャルの……、シャルロッテとの思い出を対価にさせてください!」


 ゾフィーは、灼眼を丸くする。

「そんな大切なものを!? 本当にいいの!?」

「はい! 彼女とは、二人でもう一度やり直します! 新たな思い出を作ります! 必ず、できる気がしますから!! お願いします!!!」

 トールは、真剣な気持ちを言葉に込めて、力強く全能の精霊にぶつけた。

 そして、深々と頭を下げた。

 90度に曲げたその姿勢をいつまでも続けた。


 ゾフィーは、しばらく迷っていたが、外の景色が見える壁の穴からグスタフが中へ入ってくる音がしたので、決心した。

「わかったわ。リミッタをいったん解除するわよ。おまけだけど、魔力も補給してあげる。あの男に勝つ分だけね。そして、今の体がバラバラになりそうに感じた時が95%の力に達した合図だから、必ずそこで止めなさいね。命に関わるから」

「はい!!」


 ゾフィーは彼の決心を確認すると、右の手のひらを、彼が下げたままの頭に近づけた。

 すると、トールの全身がまばゆい光に包まれた。

 あまりのまぶしさに、グスタフは目を閉じた。

 しかし、彼は、右の手のひらで光を遮りつつ、部屋の中に侵入し、速力を早めた。

 穴を一つ、また一つと通過してくる。


 とその時、ゾフィーがフッと消えた。

 そして、まだ光り輝くトールが、おもむろに上体を起こした。


「てめえ!! くたばれえ!!」

 グスタフは左手を大きく振りかぶり、加速してトールの懐へ飛び込んだ。


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