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僕と幼馴染みと黒猫の異世界冒険譚  作者: s_stein
第二章 魔法学校編

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第137話 黒のタートルネックの男

 鳴り止まない拍手の中、エレオノーレが倒れている付近で何やら喧噪が始まった。

 すると、拍手が潮を引くように消えていく。

 代わりに、ザワザワと話し声がごった返した状態になった。

 穴の底から見上げているトールには、穴の外で何が起きているのか、さっぱりわからない。

 ヒルデガルト付近の人垣が少し開いているので、そちらに跳んで確認しようとしたその時、喧噪が始まった現場付近で、ひどく痩せた男が穴の縁までやってきて、しゃがみ込んだ。

 ズボンは制服のようだが、上は黒のタートルネックという、Tシャツ姿の男だ。


「よう。一応、英雄(ヘルト)気取りの一年坊主」

 少し高い声の持ち主だ。

 この声が発せられると、辺りは水を打ったように、しんとなった。

 薄ら寒い風の音だけが耳朶を叩く。


「年中組二年生のスター、いや、一応、この帝国魔法学校のスターというべきエレオノーレ・アドラーを、使い魔共々瀕死の状態までぶちのめすったあ、相当な度胸があるぜ」

 彼が、サッと髪をかき上げる。

 遠くで分かりにくいが、トールと同じ、サラサラヘアらしい。


「一応、手加減なくやってくれるじゃん」

 その言葉にトールはドキッとした。

 確かに、調子に乗って手加減をしなかった。

 それで、相手が瀕死だという。

 もし死んだら?

 そう思うと、彼は震えが止まらなくなってきた。


「おら! てめえら! 一応、後ろに下がれ! そこも! そこも! そこも!」

 彼は、穴の周囲にいる生徒達を次々と指さした。

 見学者達は、一斉に後ろに下がって姿を隠した。

 ただ、シャルロッテ、マリー=ルイーゼ、ヒルデガルトだけは残っていた。

「こらあ!! そこの女ども!! 穴に落ちたいのか!! 落ちたくなけりゃ、一応、下がれってんだ!!」

 男は、三人を恫喝する。

 さすがの彼女達も後ろに下がって、姿が見えなくなった。

 穴の縁は、仕切る男だけになった。


「さあって、修繕でもすっか。一応、学校だからよ」

 男は、よっこっらしょと立ち上がると、両手をズボンのポケットに突っ込む。

 そして、下を向き、上を向き、トールを見下ろした。


「そーらよっ!」

 男はそう言うと、右足を振り上げ、ドスンと踏み下ろした。

 すると、それが合図となり、大地がぐらぐらと揺れ始めた。

 トールが辺りを警戒していると、突然、穴の中へ土砂が滝のように降ってくる。


(まずい! 穴が土砂で埋められる!)


 トールは、一気に穴の縁まで跳躍した。

 ところが、着地した地面の土砂がズルズルと穴の中に滑っていく。

 慌てた彼は、地滑りがない位置までさらに跳躍した。

 穴の縁にいた男は、自分とエレオノーレ達の周辺だけ地面の土砂が動いておらず、ポケットに手を突っ込んだまま、穴が塞がっていくのを見ている。


 実に長い地響きだった。

 直径50メートル、深さ10メートルの大穴は、みるみるうちに周囲の土砂で埋められていく。

 トールも生徒達も、ただただ口をあんぐりと開けて眺めているしかなかった。

 そして、いびつながらも校庭は、男の口癖の通り『一応』平らに戻り、地響きが収まった。

 修繕が完了したらしい。


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