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僕と幼馴染みと黒猫の異世界冒険譚  作者: s_stein
第二章 魔法学校編

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第127話 長剣一振りのお手軽攻撃

 ドラゴンのアドルフが、エレオノーレを見上げて、両翼を広げた。

「お嬢。あいつは、がら空きだ。やるなら、今」

「おい、アドルフ! 早まるな――」

「いいえ、ここはお任せあれ」

 エレオノーレの制止を振り切ったアドルフは、翼を大きく羽ばたかせ、四本足の鋭い爪を立てながら、トールの方へ一気に舞い降りた。


 下を向いていたトールは、イゾルデを背負ったまま、飛来するドラゴンの羽の音に耳を澄ます。

 一点集中。

 そして、サッと長剣を振り上げ、音のする方向へ一気に振り下ろした。


 ゴオオオオオオオオオオッ!


 右腕だけのたったの一振り。

 それだけで発生した衝撃波が、陥没した地面を轟音とともに駆け上り、土砂を吹き上げながらアドルフを襲う。


「おわっ!!」

 アドルフは、一瞬にして襲ってくる衝撃波を避けきれず、左の羽の一部をかっさらわれた。

 その衝撃波は勢いを弱めることなく、さらに駆け上る。

 エレオノーレとギュンターが左右に跳んでできた間隙を突破し、そのまま空中へ飛んでいった。

 アドルフは、這々の体で穴をよじ登っていく。


 衝撃波が結界にぶつかる音がしない。

 トールは、結界の解除をそれで確認した。

 そして、イゾルデを背負ったまま、穴の底から一気に縁までジャンプする。

 それから、イゾルデを校庭の隅に横たわらせると、長剣を持ちながら、坂を恐ろしい速さで駆け下りた。


 薄情ではないか? イゾルデをおいていくなんて。

 でも、トールはどうしても違和感が気になっていた。

 何が?というと、彼は自分の口からそれを言うとたちまち赤面してしまうので彼の代わりに言うのだが、背負ったときに女性の体の起伏を感じなかったのだ。

 イゾルデは、割とぽっちゃりしていて、それ相応の女性の体をしている。

 それが、男を背負っているように感じたのだ。


(絶対、何かがおかしい。それを確かめないと)


 彼はそう考えながら年少組一年生用の城に到着すると、一気に城の屋上まで跳躍した。

 すると、ちょうど誰かが落ちてくる。

 マリー=ルイーゼだ。

「これは確認するのに好都合」と、トールは独り言をつぶやいて、ジャンプをする。

 だが、彼は自分で口にしたその言葉が恥ずかしくなり、たちまち赤面した。


 空中で彼は、彼女をしっかり受け止める。

 ほてった顔に当たる風が涼しい中、立てた仮説を立証しようと、彼女の胸を間近で凝視した。

 だが、彼には、直視は1秒が限界。

 真っ赤な顔をすぐに背けた。


 やっぱりだ。

 あるべきものがない。

 小玉スイカのはずが、ぺったんこ。

 顔も髪型も背格好も、完璧にマリー=ルイーゼなのだが。


 彼女が目を閉じたマネキンのように見える。

 これをこしらえたのは誰だ?

 中途半端な手抜きは、弾劾されるべき、と彼は思った。


 マリー=ルイーゼを抱きかかえた彼が華麗に着地したその時、屋上の扉の方から日本語が聞こえてきた。

「オイ! ボウズ! コッチニ コイ! ミセタイモノガ アル!」

 見ると、黒猫マックスが扉からチラリと顔を出している。

「ナニ!?」

 トールは、声のする方に向かって一歩踏み出した。

 が、その途端に、また意識を失った。


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