第11話 伸るか反るか
女の提案にどう対処すべきかの検討に時間をかけたのだが、『聞くだけ聞いてみよう』という結論に達した。
議論した割には、出した結論がしょぼすぎると笑わないでほしい。
『黒猫を仲間にする』は、彼女達全員が猫好きなので即決だった。
さて、これから誰があそこまで行って話を聞いてくるか?だ。
もし全員が行って女が手のひらを返して本性を見せてきたら、彼女達が巻き込まれて危険だ。
結局、僕が代表で聞きに行くことにした。
見ず知らずの人物の甘い言葉に乗せられているかもしれないし、相手が女だからといってホイホイと近づくのは危険な行為だとわかっているが、今彼女達を守るには男の僕が行動するしかないのだ。
格好つけ? 何とでも言ってくれ。
僕は彼女達の方を向いて余裕の笑みを浮かべ、敬礼のように額に当てた右手の指二本を、斜め上に振り上げる。
「じゃ、行ってくる!」
本当はちょっぴり膝が震えていたのだけれど。ローブの下じゃ、見えないよね。
「あんた、危なくなったら逃げるんだからね。気をつけなさいよ」
そう言う彼女は二城カリン。
丸顔。わずかにつり目。細い眉。低い鼻。金髪で腰に届く長さのツインテール。
ちょっとツンデレが入っている。
僕がキチンと謝りたいのは、彼女。
僕の鼻の辺りに頭があるくらいの背丈だ。ちょっとやせ形の体型。
バストが貧弱なことを気にしていることは内緒。その話に触れたくないのだが、いつも向こうからその話題を振ってきて、いつもこっちが殴られる。
もし不憫だと同情してくれるなら、彼女に『まだまだ成長するぞ』と嘘でもいいから言ってやってほしい。
「気をつけてね♪」
そう言う彼女は参上ナナセ。
面長。ぱっちりした目。きりっとした眉。すらっとした鼻。オレンジ系の色の髪で、腰まで垂れたポニーテール。
しっかり者でハキハキとしゃべる、頼れるお姉さんのように見えて、実は甘えん坊さん。
僕よりちょい低いくらいの背丈だから、165はあると思う。
メロンというか小玉スイカというか、鎖骨の下にあるあの二つをグイッと突き出す姿。
それを見せられると、いつも目のやり場に困り、顔が赤くなる。
カリンとナナセの二人へ交互に視線を送ろうものなら、なぜか、残念なカリンにいつも殴られるのだ。逆ならまだしも。
この哀れな子羊にお慈悲を!
「行ってらー」
そう言う彼女は市場アオイ。
丸顔。少し垂れ目。少々太い眉。やや高い鼻。銀色の髪で、短めのショートヘア。
女の子にしてはどこか少年を思わせる少し低いトーンで落ち着いた感じ。
僕の肩より、ちょい下くらいの低い背で、よく小学生に間違われる。
ボーッとしているかと思うと、急に難しい本を読み始め、かと思うと一人でチョウチョを追いかけていくとか、行動が全く読めないマイペース派。
学年成績は、小学生の時からトップを独走している。ある種の天才。
僕は彼女達の言葉に送り出され、女の動きを警戒しながら、足を繰り出した。
そして、右肩辺りに声をかける。
「なあ、ニャン太」
「いきなり略すな、馴れ馴れしい」
「じゃあ、ニャン太郎。今ここで聞いていいかい?」
「おお、いいぞ」
「このまま付いてくるの?」
実は、黒猫が僕の右肩に乗っかったままなのだ。
「おうよ。見届け人役さ」
「右肩が重いんだけど」
「じゃあ、背中にぶら下がってやるか? 思いっきり爪立てて」
「い、……いいです」
さあって、異世界への誘いは天の助けか、それとも地獄の罠か。
最強の勇者になれるという言葉は、約束された未来か、釣り針の鋭利な先に丸められた練り餌か。
足にまとわりつくスモークを蹴りながら、僕は黒猫ニャン太郎を肩に従え、今なお微笑みを投げかける真意不明の女へと近づいていった。
まるで、そこから発する強大な磁力が僕らを引き寄せているかのように。




