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僕と幼馴染みと黒猫の異世界冒険譚  作者: s_stein
第二章 魔法学校編

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第105話 炸裂する大技2連発

 体勢を立て直した骸骨達が、トールへ襲いかかる。

 最前列の骸骨は、斧を大きく振りかぶった。

 彼は、そんな迫る身の危険を顧みず、拳を空高く振り上げる。

 すべては、この一撃で終わらせるのだ!

 彼のこめかみには血管が浮き上がり、憤怒に似たもの凄い形相で咆哮する。


「吹き飛べええええええええええええええええええええっ!!」


 渾身の力が込められた彼の拳は、鋭く風を切る音を立て、地面へ振り下ろされた。

 少し遅れ、邪悪な骸骨も彼にめがけて斧を振り下ろした。


 ドオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオン!!!


 ダイナマイトの爆発のような大音響と、立っていられないほどの大きな縦揺れ。

 噴火のように巻き上がる土砂。

 その土砂もろとも吹き飛ばされる多数の骸骨ども。

 宙を舞う剣、斧、盾、そしてバラバラになった骨。

 振動で枝をゆさゆさと揺らす木々。


 10メートルほど後退していたアーデルハイトは、大音響に耳を塞いだ。

 ちょっと大げさに後退しすぎたと思った彼女だったが、縦揺れに続いて、自分の足下から土砂が吹き上げてきたことに驚愕する。

 彼女は、血相を変えてさらに後退するも、今度は足下の土が沈み込んでいった。

 地面の陥没だ! 穴に落ちる!

 彼女はダイブした。


 すんでの所だった。

 辛うじて、腕と胸で穴の縁に捕まった。

 両足は地の底を向いている。

 彼女は後ろを振り返った。

 すると、眼球がこぼれ落ちるかのように目を見開いた。

 絶世の美女は、たちまち顔面蒼白になった。


 直径30メートルは優に超える大穴。

 深さは5メートルはあるだろう。いや、もっと深いかもしれない。

 自分は、この蟻地獄の穴に落ちる寸前だ。

 その底の真ん中には、降り注ぐ土砂を浴びているトールらしい制服姿の男が見える。


 穴の周辺では、斃れた骸骨が次々と光の粒に包まれて消えている。

 吹き飛んだ奴らの末路は、この世界からの消滅。

 やったのか?

 いや、まだである。


 骸骨の群れは、憎たらしいほど、まだまだ穴の向こうに残っていた。

 しかも、光の柱が十数本立っていて、白骨部隊の兵士を増産中のようだ。


 穴の縁にたどり着いた奴らは、下の方を覗いてトールの姿を認めると、剣や斧を振りかざしながら、穴の底に向かって足早に降りてきた。

 トールはかぶった土砂を振り払い、膝を深く曲げると、後方へ高く跳んだ。

 彼は放物線を描いて、アーデルハイトの手前に華麗に着地した。

 そして、目の前で起きている彼女の災難に驚愕し、サッと手を差し伸べてわびた。


「先輩! ごめんなさい!」

「いいわよ。あなたって本当に――」

 彼女は穴の縁に立ち上がって、かぶった土砂を払いながら、泥だらけの顔で微笑む。

英雄(ヘルト)ね」


 しかし、骸骨どもは穴の底を通過し、こちらに向かって上ってこようとしているところだ。


「先輩! 僕の剣で一気に片をつけます! 危ないですから、後ろに下がってください!」

「わかった!」


「今度こそですよ!」

「大丈夫よ!」


 トールはさらに振り返り、「みんなも下がって!」とシャルロッテらに向かって叫ぶ。

 彼女ら四人にとって、トールの大技が危ないのは毎度のこと。

 全員と一匹は、これから起こるであろう彼の弩級の技を思い描き、後方へ一目散に避難する。


 トールは、向かってくる骸骨達を睨み付けて、それまで左手に持っていた長剣を両手で握りしめた。

 そして、深く息を吸い、腹の底から力を入れる。

 魔力が体の芯から吹き上げてくるようだ。


「はああああああああああああああああああああああああああああああっ!!」


 彼は気合いを入れ、長剣にありったけの魔力を注ぎ込みつつ、大きくゆっくりと振りかぶった。

 それは、魔力に満ちあふれ、ボウッと炎に包まれながら上へ上へと掲げられていく。


 彼の全身が、一層白く光り輝く。

 またもや彼は、無意識のうちに、一段上の力を潜在能力から引き出した。

 最強の力へ、さらに一歩近づいたのだ。


「いっけええええええええええええええええええええええええええええええっ!!!」


 トールは大きく振りかぶった長剣を、持てる力の全てを込めて、ギュンと素速く振り下ろした。

 その目にもとまらぬ速さ。

 これは、人間業ではない。

 あらゆるものを斬り捨てる強靱な長剣が、彼の振り下ろす力によって、空中で大きくしなった。


 ゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!


 剣が斬る空気の、急激な圧力変化による爆発音。

 すさまじい剣圧!

 その衝撃波は土砂を高く舞い上げ、地響きを立てて大地を引き裂きながら、恐ろしい速さで一直線にケートへ襲いかかる。

 まるで、飢えた獣のごとくに。


 ケートは、大地を割りながら迫り来る衝撃波の驚異を、己の魔力で対抗しようと試みる。

 彼女は両方の手のひらを前に出し、無言で、銀色に光り輝く魔方陣を出現させる。

 それは一気に、直径が彼女の背丈ほどの大きさに広がった。

 その巨大な魔方陣はまばゆい光を発しながら、衝撃波を果敢に受け止める。


 バリバリバリッ!


 だが、防御用の魔方陣は粉々に砕け散った。

 衝撃波は、さらに彼女を小石のように吹き飛ばしながら、まだも地割れを広げる。

 トールの剣圧が勝ったのだ。


 宙を舞った彼女は引力を無視して空中を直進し、林の木々に激突しながら、細い木を5、6本をなぎ倒した後、奥の太い木にもたれる格好で激突した。

 地割れは、林との境界で途絶え、残響がこだまする。

 司令官を失った骸骨どもは、一斉に光の粒となって消えていった。


 辺りは静寂が支配し、トールの肩で息をする呼吸音だけが聞こえていた。


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