稲床を作りながら
足腰の弱くなった父と、育苗用の苗床を作りました。田んぼの一画をシートで囲って小さな水田を作る作業です。その合間に、父と話した内容です。
「ねぇ、この下粘土層ってどのくらいの厚さあるの?」
「さあなぁ、一尺くらいあるんじゃないか」
「じゃあさ、鍬で少しぐらい削っても安心だねぇ。粘土層がなくなったら水たまらなくなるんでしょう」
「そうだろうなぁ。この辺りは河原みたいなガラ場だからなぁ。昔土を入れて田んぼにしたんだろうなぁ」
「ねぇ、牛や馬で耕したのって覚えてるの」
「昭和20年くらいからかなぁ。西山地区から馬方さんが馬を1日歩かせて連れてきて、5・6件で班を作って、10日くらいこのあたりの家に泊まって、馬耕をしてもらってたなぁ」
「それって、お父さんの子供の頃じゃない」
「そうさぁ、30年ごろになると耕運機で耕運した後、角材引いて平らにしてたなぁ。」
「それなら、私も覚えてるよ。学校で田植えした時には、子供たちに水田で相撲させてその後、野球の道具で平らにしてた」
「そうか」
そんな話をした後、私は周りを見回しました。先人が何年もかけて手を入れた水田の多くが、住宅地になっています。なんだかもったいないような気がしたのでした。




