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日々の出来事  作者: 真澄
93/100

ビックデーター

 携帯電話会社の宣伝に乗せられて、ガラケーからスマホに買い替えて半月ほど経ちました。買い替え手続きの時に、受付の方に

「ガラケーからこの機種ですか」と言われて少しむっとしています。家族割の手続きの関係で、亭主殿の機種も受付の方はわかっています。いいじゃないですか、ガラケーから最新機種に機種変したって。どこか問題でも。今までタブレットを使っていて、その機能をすべて果たす機種にしたら、最新スマホになっただけのことです。使い方もわからないで、ただスマホを持ちたい亭主殿と一緒にされるのは心外です。

 ちなみに亭主殿は、必要最低限の機能しかない機種です。それでも、テレビが見れないとか、電子マネーの機能がつかえないとか、言い出さないので問題ないと思います。私は、電子マネーが使えないと寂しいし、電子書籍を使う関係で大きな画面の方がいいし、テレビも出来れば見れた方がいいし、急に写真が撮りたいときも出てくるし、いろいろあるのです。

 携帯会社で機種変更すると、いろいろなオプションに入らされます。今回の場合、初めてスマホ割とか春の機種変更割とか、いろいろな割引がついているので、少しくらいオプションのアプリがついてきても、文句は言いません。お試し期間で解約してもいいようなので、無料の間に使うだけ使ってやろうかと。いやいやいや、そうやってミイラとりがミイラになってしまった経験があったような気もしますが、その時はその時です。

 で、いろいろなアプリを使おうとすると位置情報やらなにやらの提供の確認を取る画面が出てきます。そこで認可しないとアプリが使えない。なんだか薄気味悪さを感じています。


 数年前のこと、デジカメを選んでいる時の店員さんとの会話を思い出しました。

「こちらがGPSを使って、撮影場所を記憶しておく機能があります」と店員さん。

「なんに使うんですか、その機能」と私。言いにくそうに店員さんは、旅の思い出としてとかなんとか言っていたような気がします。

 2月の娘の中学の入学前の説明会でのことです。学校の説明のほかに、SNSの危険性についての説明がありました。何気なくSNSに上げ写真には位置情報も記憶されているとのこと。SNSで名前を隠していても、写真や記事の内容から自分がわかってしまうことや、その先危険性についての説明がありました。


 少し前、トランプ氏が大統領に就任したころのことです。アメリカで、イギリスの作家ジョージ・オーウェルの小説『1984年』が注目されているという記事を目にしました。その時の記事には、トランプ大統領に作品中に出てくる特栽者を見ているのではないかといったような記事だったと思います。

 私がこの小説を読んだのは、30年以上も昔のことです。あらすじくらいしか思えていませんが、暗くて陰湿で嫌な印象しかおぼせていません。何をするにも監視されている社会。朝の体操ですら、監視されます。言葉さえも検閲されて、禁止されている言葉を使うことができない社会です。使用可能な言葉の辞書に掲載されている言葉は、更新されるたびに少なくなっていきます。最後には主人公は、体制に洗脳されて静かな生活を送るようになって終わったような気がします。

 

 この小説をただの空想と笑い飛ばすことができません。携帯会社はガラケーから様々な機能の付いたスマホへの機種変更を勧めます。人々は勧められるままに、便利な機能を使います。するとどこで何を買い、いつどこへ出かけ、SNSを覗けば何に興味があるのかの情報が記録されていきます。SNSで悪ふざけをすれば、他のユーザーからたたかれます。誰が何のために使うかもわからない、目的のないままに記録されていきます。常識に外れたことをすれば、すぐに多くの人々にさらされます。デストピアのお話のように、体制が人民を支配するために生活記録をとって管理しているといわれたほうが、まだ納得できるのは私だけでしょうか。

 なんってことを思っていたら、フランスの哲学者が何十年も前に同じようなことを考えていたことを知りました。


参考文献 『いま世界の哲学者が考えていること』岡本裕一朗 ダイヤモンド社

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