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日々の出来事  作者: 真澄
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桜始開(さくらはじめてひらく)

 我が家には大きな桜の木があります。家の前を通る方の中には、古い桜の木だと思う方もいらっしゃるようです。そんな方に

「私の小学校の入学の記念樹です」とお答えすると、驚かれます。今でも新一年生には行政から、入学の記念樹引換券が配られています。植えるスペースのない場合には、同等の鉢植えなりなんなりが各園芸店で引き換えることができます。

 日本全国にソメイヨシノが多いのは、数年で育ってお花見の名所ができることが一因にあるようです。我が家の桜は、四半世紀以上経っていますが半世紀までは経っていません。

『桜切る馬鹿、梅切らぬ馬鹿』という言葉があります。桜は切ったところから腐りやすいのですぐに弱ってしまうので剪定はしない方がいいのですが、梅は剪定して木の勢いを抑えないと身の付きが悪くなるということです。母はそのことを信じて、桜の木を全く剪定しませんでした。その結果、植えた時には隣の柏の木に負けてしまいそうだった苗が、太陽を求めて上に上に伸び、今では柏の木よりもはるかに立派になってしまいました。

 そんな桜の木を見て、

「家付き娘の天井知らずのお前のようだ」と母は言います。いやいやいやそう育てたのはあなたですから、と私は言いたいです。おまけに

「年寄りっ子は三文安い」とまで言い出します。ハイハイ、出来の悪い娘で悪うございました。


 小学校の頃、社会の時間に桜前線を見ていた時のことです。誰が、

「長野だけよけて通っている」と言いました。南から少しずつ北上する桜前線は、長野盆地をよけるように大きく曲がっています。まるで自分の住んでいる場所だけよけられているように見えたのでしょう。答えは簡単で、地形や標高の関係です。そういったことを学ぶ時間だったような気もします。

 桜前線は正確には、さくらの開花予想の等期日線図と言われていたようです。今では桜の開花予想は気象庁ではなく、民間の業者が行っているそうです。日本気象協会も民間の団体になるようです。

 気象庁では、気候の変動を観察するために、生物季節観察を行っています。ウグイスの初鳴きやツバメ、モンシロチョウが初めて見られた時期を観察しています。植物でも、ウメやアジサイの開花やイチョウやカエデの紅葉などです。

その中で、ソメイヨシノの開花だけに注目が集まるところに、日本人のサクラ好きが伺われます。全国にあるソメイヨシノの遺伝子に、違いはないといわれています。季節観察の植物としてはうってつけというわけです。


今日は七十二候の、桜始開さくらはじめてひらくだそうです。開花宣言されていつ地域は少ないですが、これから全国から桜の便りが届きます。


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