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日々の出来事  作者: 真澄
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娘の春

 卒業式を明後日に控えてのこと。学校から帰ってきた娘が、

「お母さん怒らないでね。これから買い物に連れて行って欲しいんだけど」と言います。

 聞けば、上履きがボロボロだから新しい上履きが欲しいとのこと。いやそれは、卒業式にボロボロの上履きでも、恥ずかしことではないと言い聞かせたはず。小学校の卒業式だから中学生の新しい制服を着て出席するけれど、中学の卒業式なんて3年間着込んだテッカテカの制服で出席するんだから。高校の制服じゃないのと、不思議がる娘。高校の合格発表は、中学の卒業式の後です。

 だから先週のお休みは、市街地にあるアニメショップに行ったんじゃなかったっけ。中学指定用品を購入できるお店は、アニメショップと反対方向にあります。両方行くのは、面倒い。

 「今日ね、みんなに聞いたら卒業式の日ね、スクバで学校に行くんだって。その中身を聞いたら、中学の上履きを入れていくんだって」そういう話は、もっと早く聞いてきなさい。前々から卒業式はどうするのか、周りのみんなに聞いておきなさいって言っていたのに、です。

 近くのスーパー内にあるファンシーショップに確か、スクールバックが置いてあったはず。そこに寄って値段の下調べをすると、思っていたよりもお高いものでした。

 最寄りの中学校指定用品を取り扱っているお店は、旧道沿いにある瓦屋根の民家のようなお店です。壁の看板を見ると、昔は布団屋さんだったようですが、今では地元の小中学校の指定用品の取り扱いの方が多そうです。どうせ来たのだから入学式に必要な、学校指定の背負い鞄と、スクールバックもファンシーショップとそれほど値段に差がなさそうなので、いただくことにしました。

 

 そして迎えた卒業式当日。仲の良かった友達と一緒に写真を撮るのだといって、集合時間よりも早く学校に行きたがります。前日、あまり早く登校しないように担任の先生に言われたはずではなかったですか。娘が約束してきた時間に仲良しグループの友達が集まることはなく、一人増えては撮り次の子が来ては撮り、を繰り返すこと数回。自分たちのグループだけでその場所を独占してはいけません、と言いたくなるほどです。

 小学校最後の帰りの会での、担任の先生のお話

「この学年は個性の強い子が集まっていて本当に大変でした。これから君たちは大きくなると、怒ってくれる人、ほめてくれる人がどんどん少なくなってきます。君たちは人によっては3年間、または2年間先生に強く強くいってきました。そんな君たちだから人に言われなくても、やっていいこと・いけないことはわかると思います。君たちは立派な6年生でした。先生はこの学校からいなくなってしまいます。もし君たちが中学校で困ったことがあって、だれかに話を聞いて欲しいと思った時には、この学校に残っている先生に話をしに来てください」

 女の子だけではなく、男の子の目も真っ赤になっています。たまの参加日に行っても、クラスのガキ大将のような雰囲気を醸し出していた先生でした。クラスのみんなに好かれた先生だったようです。

 学校中の先生方に見送られて、最後の下校の時間になりました。泣くだけ泣いた後の子たちは、晴れやかな顔をして学校を後にしていきました。


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