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日々の出来事  作者: 真澄
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剪定

 居間の南側には、古いアンズの木があります。何年も放っておかれて、弱った木です。数年前から剪定の練習にこの木を使っています。枝ぶりを見てどの枝が勢いがいいのか、どの枝を落とせば木の勢いが整うのか。そういった基本的なことを母と一緒に剪定しながら数年にわたって、経験してきました。 大きくなり過ぎた木は、さすがにここ数年切り詰めても小さくはなりません。ですが、枝もすっきりして花の付きもよくなり、少しばかりの実をつけるまでになりました。

 春先になると、商売物の果樹の剪定も行います。私が小さい頃は、業者に依頼していたような気がします。ですが最近では、引き受けてくれる業者がいないとか、お金をかけるほど価値がないとかで、父が行うようになりました。出荷する果樹の剪定は、今まで手を出しませんでした。ですがここ数年でめっきり老け込んできた父を見ると、見て見ぬ振りも出来なくなってきました。今年くらいから数年かけて覚えていかないと、ゆくゆくは自分が困りそうです。

剪定をする場合、絶対に切っていい枝があります。まっすぐ上に伸びる強い枝で、徒長枝とちょうしと言います。この枝は伸びるだけで、花芽が付きにくく養分が集まりやすい枝です。この枝を放っておくと木の養分が必要以上に使われて、ゆくゆくは木が弱ってしまうのです。私が切るのはこの枝です。これ以外の枝は、細かい枝は理解できないので、父任せです。

 それでも、基本を説明を受けました。

「ここをこう切ると、かっこいいだろ」って父。どこがかっこいいのか、私には理解できません。

 今まで桃の剪定は、母の分担でした。母曰く

「モモの剪定は楽よぉ。背打って腹打って、ちょんちょんちょんよ」だそうです。背は太い枝の上に出ている枝、腹は下を向いて生えている枝。そこまでは私もわかります。そのあとの、ちょんちょんちょんが難しいとおもうのですがね。その母でも、リンゴの剪定は難しいといいます。

 そうはいっても、全く出来ないはずはありません。母が手を出さない理由は、ケンカになるからです。多分。どの枝を残して、どの枝を切るかは、基本はありますが考え方は人さまざまです。これが夫婦でも考え方が違えば、ケンカのネタになりかねません。

 それが証拠に父が不在の時に自家用のリンゴの木で、剪定の基本を説明してくれました。その母も

「ここを切ったら、ほらかっこよくなった」だそうです。盆栽と同じ感覚だとは、思いたくない。

 父は強い枝を落として、弱い枝をたくさん出して芽が付きやすくするといいます。出る杭ではなく、強い枝は落とされる運命なのだと理解しました。ところが母は、弱い枝を落として強い枝を伸ばすといいます。どちらも間違っていないところが、厄介です。

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