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日々の出来事  作者: 真澄
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本を買いに

少し前のことです。娘が『人間失格』を読みたいと言い出しました。いやいやいや、そういった本を読みたいお年頃なのはわかります。ですが、あれはだめです。

昔、私も読みました。大まかなあらすじしか覚えていませんが、楽しかった覚えがありません。どうせ読むなら、『走れメロス』とかもうちょっと前向きになれる作品の方がいいような気がします。そう思って数年前に義父から頂いた、絵本を探しました。娘にはまだ早いと思ってどこかにしまったはずなのですが、みつかりません。ダメ嫁です。

金曜日、学校から帰ってきた子供たちが珍しいことを言い出しました。近くの大型書店に行きたいというのです。聞けば、年度末で学校の図書館が閉館してしまっているので、毎日の読書の時間に読む本を用意するように言われたとのこと。家には子供に読ませたくて買ったままの本が、何冊もあります。それを出してみましたが、新しい本が欲しいといいます。

これが切っ掛けになって本を読むようになることを願って、本屋さんに連れていくことにしました。書店には我が家と同じような親子が、数組見受けられます。クラスの男の子を見つけて逃げ回る娘。そういったお年頃のようです。

 お姉さんが手に持っていたのは、漫画本とライトノベル。学校の読書の時間に読むのには少し軽すぎるような気もします。漫画本はお小遣いから差し引いて、ライトノベルと『人間失格』を親がもつことにしました。

『人間失格』については、私が読んだはずの物を探したのですが見つかりませんでした。あまりの内容にリサイクルショップにでも持って行ってしまったのかもそれません。そこで、娘が漫画本を物色している間に探したのです。最近は少し難しそうな小説の表紙に、今っぽいキャラクターのイラストをつけて販売されています。活字も少し大きくして、それで若者の本離れを少しでも解消しようというのでしょうけれど、内容はかわらないよね。

 息子は学校で人気の、学習漫画シリーズから2冊を選びました。一冊は、戦国時代の解説書のようです。最近ゲームのキャラクターには、戦国武将からとったものが多くあります。そんなところから、歴史に興味をもってくれればと思うのですが、親の思うようには子供は行かないものです。


 私の書棚から『人間失格』の文庫を探している時に、芥川龍之介の短編集が見つかりました。『杜子春』のような、小中学生向けの作品が集められているものです。社会に出てすぐの頃ラジオ番組で、芥川龍之介が『桃太郎』を書いていると聞いて探して手に入れたものです。今の娘に読ませたいのですが、全く興味を示しませんでした。『蜘蛛の糸』の朗読を始めると、

「やめて」と一言返ってきました。

 久しぶりに目を通してみると、活字が細かい。昔はこれで平気で読んでいたはずなのに、変なところで年を感じてしまいました。


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