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日々の出来事  作者: 真澄
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銀しゃり

 秋の長雨の合間をぬって、稲刈りをしました。開発から取り残された小農家は、いろいろ大変なのです。広く稲作をやっている農家でしたら、コンバインでガーとやってしまえば秋の取り入れば終わりです。ですが大型の機械が入らない我が家は、農協にも見放されて、小型の機械でちまちまと稲を刈って、せっせと稲架掛け(はざかけ)に稲束をかけていきます。

 ジジとババと私で稲架掛けをしていると、近所の方々が話しかけてくれます。みなさん口々に、

「倒れていないから、農協の推奨米かと思った」と言ってくださいます。

 数年前に、農協の推奨米が変わりました。それまで農協の推奨米を作付していた我が家ですが、ババが新しい推奨米を美味しくないと言い出しました。それまで、稲刈り前に倒れることの多いコシヒカリは作りたくないといっていたはずなのですが、自作のお米が美味しくないと話は別のようです。昨年から、我が家でもコシヒカリを作付するようになりました。

 ちなみに、数年前に推奨米になった銘柄は、高温対策品種のようです。ですが、農協から来たモミの注文書には、そのような説明はありませんでした。以前の品種と栽培の方法の違いが説明されているだけでした。

 稲が倒れてしまうと機械で刈るのが難しくなり、手で刈ることになります。倒れなくするためには、田植え前に入れる化学肥料を控えることになります。これが大変。広い田んぼに薄ーくむらなく化学肥料をまくのは、至難の業。ジジには脱帽です。

 機械のほうも年々改良されているので、倒れた稲でも刈れるようになってきているはずなのです。ですが、ババは昔苦労したことが忘れられないのか、稲が倒れることを非常に嫌がります。


 私自身は、お米の味の違がわかりません。うちのお米は天日干しのこだわりのお米です、と言われて出されたご飯だろうが、ファミレスのご飯だろうが、美味しくいただきます。母が美味しくないといった、農協の推奨米でさえも、別に気にならなかったし。私が好きなご飯は芯が少し残ったくらいの、一般にめっこ飯と言われる寸前の堅いごはん。普通に食されているご飯は、少し物足りないくらいです。

 

 少し前のこと、普段夕食にあまりご飯を食べない娘が、茶碗に山盛りのご飯を頬張っていました。驚く私に、

「今日、新米」と言ってきます。娘よ、まだ脱穀も終わっていないのに、新米が食べられるはずがないでしょうに、と言いたいところです。

 テレビでダイエットには麦飯がいいと紹介されて以来、我が家は麦飯です。そんな理由で食べ始めたのですが、私が麦飯の独特の食感が気に入ったのと、野菜もおかずも食べない子供たちの栄養面を考えて麦飯を続けています。たまたま麦を切らして、久々に銀しゃりが食卓に上がったのです。普段、工業製品ばっかり食べているのに、食べ物の味に敏感な娘です。


 私の祖母が生きている頃には、普段古古米を食べていました。戦時中お米に困ったからなのか、凶作を経験したせいなのか、1年以上のお米を確保していないと安心できませんでした。今でも我が家は、新米を食べるのはお正月を過ぎてからです。新米でなくても、モミで保管して食べる分だけをこまめに精米して来れば、美味しいご飯になります。

 ご飯の味がどうのこうのといえることに、感謝したいと思います。



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