04
あれ?ギルドってどこにあるんだ?
ギルドがあるのは確認していたが、場所は確認していなかった。しょうがない。誰かに聞いてみるか。
道を聞こうと思って、辺りを見渡しているとどこからか香ばしい匂いがしてきた。
ぐきゅるるるるぅ
腹が鳴った。当然だよな。朝起きてから何も食ってないもんな。匂いにつられて歩いて行くと、噴水のある広場で屋台があるのを見つけた。近づいてみると、おっちゃんが串に刺した何かを焼いている。
「いらっしゃい!」
おっちゃんが愛想よく声を掛けてきた。
「これなに?」
「ホーンラビットの肉の串焼きだ。やわらかくてうまいぞ!」
ラビットっていうからにはウサギだろうか?でも、確かにおいしそうだ。
「1本いくらですか?」
「銅貨2枚だよ」
そういえば、お金の確認してなかったな。
ごそごそとさっき貰ったお金の入った巾着、財布でいいか、財布を取り出して中を覗いてみると紙と硬貨が入っていて、紙にはお金の種類と価値が書いてあった。
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小銅貨 1ソル
銅 貨 10ソル
小銀貨 100ソル
銀 貨 1,000ソル
小金貨 10,000ソル
金 貨 100,000ソル
白金貨 1,000,000ソル
――――――――――
えっと、銅貨2枚ってことは…20ソルってことか。
財布の中を確認すると入ってるのは大小の銀色と金色の硬貨しかない。色と大きさからして、銀色の小さい硬貨が小銀貨、大きいのが銀貨、金色の小さいのが、小金貨、大きいのが金貨だろう。
財布の中から小銀貨を1枚取り出して屋台のおっちゃんに渡す。
「何本だい?」
腹も減ってるし、3本ぐらい買ってみるか。
「3本ください」
「まいど。じゃあ銅貨4枚の釣りだ。ちょっと待ってろよ」
貰ったお釣りを巾着に戻して、上着のポケットに入れる。
「おまちどう!焼きたてだから熱いぞ」
「ありがとう」
礼を言って受け取ると、早速食べてみる。
「うまい!」
肉も柔らかいし、この甘辛いたれも肉によく合っている。
「そうだろう。新鮮なホーンラビットの肉に秘伝のたれをつけて焼いてるんだ。うまくて当然だな」
「(モグモグモグモグ…ゴクン。モグモグモグ……ゴクン)」
「おい。聞いてるか?」
「(モグモグモグモグ…ゴクン。モグモグモグモグ…ゴクン。モグモグ……ゴクン)」
「聞いてないな…」
ふう。おいしかった。必ずまた買いに来よう。
「うまかったか?」
「ああ、すごくうまかった」
「そりゃあ良かった」
なんか小さい子供でも見ているかのような目で見られている。なぜだ?
「この街に来たのは初めてなのか?」
「ああ(この世界に来たのが初めてです)」
「もしかして、冒険者になる為か?」
「(いえ。人違いで誘拐されたのでしかたなく。)そうだよ」
「そうか。じゃあもう冒険者ギルドに登録はしたのか?」
「まだ。ギルドの場所が教えてもらうの忘れててさ。そうだおっちゃん、道教えてくれよ」
「はははははっ!」
道を教えてもらおうと思ったら、笑われてしまった。
「坊主はギルド支部の場所知らんかったのか。」
可笑しそうに確認される。知ってて当たり前なのか?もしかして。でも、この街は初めてだって言ったのになんでこんなに笑われるんだよ。
俺がムッとした顔をすると笑いながら謝られた。
「すまん、すまん。ほれ、1本まけてやるから、むくれるな」
そう言いながら、焼き立ての串を1本くれる。
悪気は無かったようだが、焼き串はありがたく貰っておく。俺は貰えるものは貰っておく主義だ。
俺が串を受け取ると、おっちゃんが話し始めた。
「そこに噴水があるだろう」
おっちゃんが指差した方を見ると大きな噴水があった。
「そしてこっちには時計塔がある」
今度は噴水の反対方向を指差したので、そちらを見てみると時計塔がある。数字らしき物が12個、円に沿って並んでいる。
「でだ、キルド支部はそこだ。」
おっちゃんが新たに示した方向は屋台の正面。周りと比べると比較的大きな建物が建っている。
確かに、目の前にあるのに道教えてくれって言われたら笑いたくもなるよな。
じわじわと顔が熱くなってくる。恥ずかしい・・・。
「てっきり、ギルド支部にいくついでに寄ったのかと思ってたもんだから、笑ってすまんかった。この街には初めて来たんだったな」
「いや。教えてくれてありがとう。あと串焼きも」
顔が赤くなっている気がするが教えてもらって、おまけまで貰ったので礼は言っておく。
「おう。冒険者になって稼いだらまた買いに来てくれよな」
「頑張るよ」
手を振っておっちゃんと別れると、串焼きをかじりつつギルド支部に向かって歩き出した。