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十二支学園  作者: 美也
3/6

草食男女(午未 NL)

午×未の純情NL。


両者視点。

---サイド午


おれの好きな子はとてもかわいい。


引っ込み思案なおれとふわふわした彼女。

クラスは一年の時から一緒だったけれど話した事はなくて。違うグループにいる彼女を見てかわいいな、と気になっているだけだった。けれどまた同じクラスになった二年最初の席替えで隣になってからよく話すようになって。今では一年の時には考えられないくらい仲良くなったと思う。他の友人達と話している時もおっとりとした彼女は傍でにこにこ笑ってくれていて、物凄く幸せだ。

そうして過ごしている内に気になっていた気持ちがどんどん大きくなって。気が付けば彼女の事をとても好きになっていた。


おれの気持ちを知っている友人達はいい加減告白してしまえとせっついてくるが、まだそんな勇気も無いし、もし断られたら怖いしで行動できない。


そんなおれに見かねた友人達はよくおれと彼女をペアで行動させようとする。今日だって、天気がいいから皆一緒に中庭でお昼ご飯を食べようと約束していた筈なのに、彼女以外は委員会や部活で用があると言ってドタキャンしてきた。頑張れよ、と目配せしてきた友人の応援は有難いが心臓がヤバい。


ドキドキしながらもベンチに並んで座って食べ終わったら緊張しながらもぽつぽつおしゃべり。

日差しは暖かくてお腹はいっぱい。小鳥が鳴くくらいでとても静かな中庭。そんな気持ちよい環境だから、眠たがりな彼女は段々と舟を漕ぎ出して。今ではぷあぷあ眠っている。時々むにゃむにゃ言って頭を揺らしている。かわいい。

こっそり寝顔を眺めては落ち着かずキョトキョト目を泳がせる。そうしたのんびりした時間にほっこり幸せ気分。


そんな穏やかな気分で過ごしていた時。ふと風が吹いて、彼女が体をふるりと震わせた。風はちょっと寒いかな。

そう思って上着を脱いだ瞬間強い風が吹いて制服を揺らした。わっと驚いて慌てて彼女を庇おうとして、見下ろしたその先。他の女の子より長い膝丈のスカートから真っ白な足がちょっとだけのぞいた。


「!?」


バクバクという心臓を抑え、目をそらして上着を膝に掛ける。見てない見てない。何も見えてない。

必死に誰かに言い訳をしてうっかり見えてしまった彼女の足を頭から追い出そうとするのだがなかなか消えてくれない。

羞恥心と罪悪感で身悶えていると微かな呻き声と共に肩に重みと、頬にさらりとした感触が。


「――――っ!?」



---サイド未



わたしの好きな人はとてもかっこいい。


ぼんやりとしたわたしとしっかりものの彼。

何かと気を遣ってくれる彼を好きになったのはいつだっただろう。一年の時、クラスが同じ彼をかっこいいな、と見ていたのがきっと始め。二年でも同じクラスになって、席が隣になって初めておしゃべりをして。あまりお話が得意じゃないわたしにもにこにこ話し掛けてくれて、居眠りしてしまった時には色々教えてくれる、そんな優しい彼を少しずつ好きになっていったんだと思う。


彼を好きだと知っている友達は引っ込みそうになるわたしを然り気無く彼の隣に連れていってくれる。とっても嬉しいのだけれど、胸がドキドキして、赤くなっていないかいつも心配してしまう。


今日のお弁当は友達みんな用事があって彼と二人きり。わたしなんかと一緒で迷惑じゃないかすごく不安だけれど、そばにいれるのがとっても嬉しくて仕方ない。とにかくいまはまだ近くにいるだけで胸がいっぱいなのでその気持ちを伝えることができないのだけれど、いつか、伝えることができたらいいな。


そんなちょっとした緊張も彼と話していると段々と綻んで。こっくりこっけり頭が揺らぐ。お話をもっとしたいのに。眠たがりな自分の目を一生懸命開いて彼を見ようとするのだけど、どんどん遠くなる彼の声に幸せになりながら、ぽうっと瞼を閉じた。


ふと、意識が浮上する。いつの間にか眠ってしまっていたみたいだ。

ほんのり肌寒かったはずなのに何か不思議な暖かさにふんわり包まれていてあったかい気持ちがわいてくる。まだもう少し、と頭を傾け何かに寄り掛かり、微睡みの淵へまた沈もうとしたら悲鳴が聞こえて慌てて飛び起きた。隣にはものすごく驚いた顔をした彼。


「ど、どうかしたの?」


「や!いや!何も!?」


びっくりして尋ねれば、ぶんぶんと首がもげちゃいそうなほど振って何もないと言われてしまう。心配で、また声をかけようとしたその時、ちょうど予鈴が鳴って彼はパッと立ち上がってしまった。一度引っ込んでしまった言葉を上手く引き出せずにまごついていると、そっぽを向いて行こうか。と言われる。何か、怒ってる?



せっかくお話をしていたのに眠ってしまったのがいけなかったのだろうとはっと思い至り急いで立ち上がる。謝らなければと思えば思うほど胸が苦しくなって声が出ない。

歩く彼の後ろをわたわたと追いかけていると、こちらを見ないまま声をかけられた。


「ねぇ、あの、さ」


「は、はい!」


ダメな子だと、嫌われてしまっただろうか。何を言われるのだろう。緊張で体が固くなる。


「あ、明日も、一緒にご飯食べない?」


「え?」


「ふ、二人で」


かけられた声の様子で怒っていないことが分かりほっとする。

それよりも、言われたことを理解した瞬間すごくぽかぽかした気持ちで胸がいっぱいになった。


「はい、よろこんで」


小走りで駆け寄り隣に並ぶ。あぁ嬉しい。彼といられる。彼をお話をできる。もっとちゃんとその嬉しさを伝えたい。だけど今の自分の顔はきっと真っ赤になっていて。隣の彼の顔を見れないまま教室へ戻る。

また、明日。

一緒に過ごせる時間を想って夢見心地の道を彼と二人で歩いた




『草食男女』

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