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英彦がいつも日課にしている事がある。それは彼女との会話。いつも起きては普段変わらぬ話をする。
「おはよう。お腹減った? ご飯はどれにする?」
「おっはよー。どうしようかな?」
だけど、この会話なら同棲中のカップルとかなら有り得うる話だが、英彦の彼女は違った。
「じゃあ、この三つから選んでよ。①肉巻きおにぎり ②焼豚玉子飯 ③ケバブ」
英彦はどれにしようかと考えるが、彼女は数をカウントする。
「10、9、8、7、6、早くしないと時間がなくなっちゃうよ? 5、4、3……」
カウントされていく間に、英彦は、答えを彼女に言った。
「ケバブはちょっとなぁ……じゃあ、焼豚玉子飯」
「なるほど! 焼豚玉子飯ね! じゃあ、ちょっと待ってね」
彼女の調理はフィクションの調理ロボットよりも早く、作り上げる。完璧に。
勿論、味は美味しい。俺も幸せである。その上、レシピまでレクチャーしてくれる。こんな彼女は英彦の人生で今までにない相手だった。
時に彼女は、「出かけよう」と英彦に向けて言ってくる。
英彦は、言った。
「どこへ行こうか?」
彼女は英彦の言葉を聞いてから、選択肢を設ける。
「じゃあ、ここへ行こう! ①秋葉原 ②浅草 ③東京スカイツリー」
英彦は十秒ほど考えて決めた。
「う~ん、そうだな~東京スカイツリーに行こうか」
そして二人は、スカイツリーへと向かう。
英彦は彼女と過ごす事で、満足だった。
しかし、そんな幸せな時間は一人の男性が打ち砕いた。
その男は楠木正成、サラリーマン。
楠木はこの二人のやり取りが疎かった。誰だってそうだ。こんな幸せな二人の絶望に陥る瞬間は、きっとなんとも言えない快感を得る事ができるからだったりする。
いわゆる《リア充、爆発しろっ!》である。
だが、楠木は、そんなやりとりに終止符を打つ方法を知っていた。
それは英彦の彼女の選択肢にある事をすれば、会話が終わるから。
休日、楠木は動画サイトで好きな洋楽ロックバンドの検索をし、お気に入りのPVの曲を探すと二人は現れる。
パソコンの画面に。
『おはよう。お腹減った? ご飯はどれにする?』
『おっはよー。どうしようかな?』
『じゃあ、この三つから選んでよ。①肉巻きおにぎり ②焼豚玉子飯 ③ケバブ』
楠木はうんざりしながらタイミングを待つ。
「またかよ。早くしろよ!」
そして運命の瞬間。
『10、9、8、7、6、早くしないと時間がなくなっちゃうよ? 5、4、3……』
パソコン画面の端に小さくカウントの数字が表示されている。
《5》
《4》
《3》
《2》
《1》
《0》
「やっとだよ!」
楠木は、自分が持つパソコンのマウスを持ち、クリックした。
《広告をスキップ》
英彦とその彼女の宣伝広告動画はロックバンドのPVに変わった。
「これで聞ける」
楠木は動画のPVをヘッドフォンつけながら、画面の前で音楽を聞いていた。ヘドバンしながら……
END
なんだろう。よく分からないまま書きました。
でもただ一つ言えること、見たい動画の前に広告動画が入るってイラつきませんか?
それを伝えたかったのかな。数週間前の僕。
以上です。
読んでいただきありがとうございました。