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悪物語  作者: ディーキ
2/3

1―2

「あー……」


○○○○は意識を取り戻した。しかし疑問が残る。○○○○は死んだ筈だ。意識を取り戻す、などと言う事が可能なのだろうか?


○○○○は重い頭と身体をを起こし、周囲を確認して目を見張った。何故なら○○○○の周囲には草原が広がっていたからだ。


「……えーと。え?ちょっと。何処ですか、ここ」


意味が分からない。死後の世界で悪行を……と思っていた○○○○だが、それは言葉のアヤであり、実際にそんな物があるとは思っていなかった。


しかしこれはどう言う事だろうか。死んだ筈の○○○○は確かに意識を取り戻し、芝生に似た柔らかな草は明確に柔らかく、これが現実だと如実に語る。


○○○○は混乱したまま取り敢えず自らの身体を確認した。囚人服はそのままで、伸びざらしの髪の毛も無精髭もそのままだ。問題無い事を確認した後に縄を掛けられていた己の首に触れてみた。


「……んっ」


すると鋭い痛みとヌルリとした感触。○○○○はそのまま手を見やる。ヌルリとした物の正体は血だった。○○○○は痛みを伴わない程度に続けて首に触れてみた。


「……うーん。これは」


どうやら首の皮膚が擦れて血が出ているらしい。と言う事は縄が首に確かに食い込んでいたと言う事になる。そして痛みを感じると言う事は生きていると言う事に他ならない。○○○○は自分が取り敢えず生きていると、そう結論づける事にした。


「……まぁ何でも良いんですけどねぇ」


○○○○の顔に歪んだ笑みが貼り付いていく。○○○○は何故死んだ筈の自分がこうして生きているのか分からない。そもそもここが何処なのか分からない。つまり分からない事だらけだ。


しかし2つだけ分かる事がある。それは悪とは何なのかを考える事が出来ると言う事。そしてこれからも大好きな悪行を重ねる事が出来ると言う事だ。


「うーん。まずはここが何処なのか調べる必要があるなぁ―……良し!」


○○○○は立ち上がり、取り敢えず歩く事にした。悪とは何なのかを……これから先どんな悪行を行おうかを考えながら。




☆☆☆




○○○○は歩き続ける。

しかしどれ程歩いても周囲は変わらず草原ばかりで景観に変化は見られない。燦々と降り注ぐ日の光が○○○○の体力をガンガン奪っていく。


「……それにしても何も無いですねぇ」


滴る汗を拭いながら一人ごちた○○○○はその場に腰を下ろして休憩する事にした。そしてこれまで歩き回った結果得た情報を纏める事にしたんだが、


「んー……言っても草原しか無いんだよなぁ」


情報と言っても草原が広がっている以外に無い。○○○○は結構な時間歩き回ったのだが、それしか見つける事が出来なかった。しかし少なくともここが○○○○の知る場所では無いと言う事は分かった。○○○○の居た所にはこれ程まで広大な草原は無かった筈だからだ。それならばここは何処かと問われれば相変わらず分からないのだが。


「……寝よう!」


○○○○はこれ以上の思考は無駄だと思い放棄。そしてその場で横になった。柔らかい草の感触が心地良い。眠気はすぐに訪れた。




☆☆☆




何かの物音が聞こえた。そしてそれが耳に届いた時、○○○○の意識が現実に戻ってきた。


「……んん?」


聞き間違えかとも思ったが、○○○○は耳を澄まして周囲に意識を傾けた。どれ程些細な事でも情報は貴重なのだ。


○○○○が耳を傾けていると、やがてガキンガキンと硬い何かが打ち合わされる様な音が聞こえてきた。しかしそれだけでは無かった。これは……


「……声!」


声と思しき何かが聞こえると○○○○はすぐさま身体を起こして走り出した。もしかしたら人と出会えるかもしれないとの期待に胸を踊らせながら。


「久しぶりに殺せる!」


しかしその期待に込められた意味は常人に意図出来る領域を越えていた。


○○○○は一人草原を走る。悪行を重ねたいと言う己の欲望の捌け口を求めて……

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