赤の実は二人の証
「っ……くうっ……!」
背伸びをして、私は木の枝に手をかける。
こんな時、十四歳にして145センチメートルの身長を恨む。
体力は余る程あるのに。
さっき手をかけていた枝に、私は足を乗せた。
「もっと、もっと背丈があればな。……あっ!」
その時。
「赤の実、見つけた……!」
枝と枝、葉と葉に隠れて、握り拳程の二つの赤の実がキラキラ輝いて見えた。
赤の実の木は、私の住んでいる村だけでしか生きることのない、貴重な樹木らしい。
この村は国内で自然の植物が一番育ちやすいところだから、村限定の植物っていうのも珍しくない。
だけど、今は赤の実のシーズンは終わりかけていて、探すのも一苦労。昨日と今日で、村を半周した。『そんなに大変な事を一生懸命できるのは、君だけだと思う』
と、幼馴染で同い年のリョウは呆れながらも褒めてくれた。
リョウは「無謀過ぎてバカバカしい」って時は、そのまま思った事を口にする。
私が赤の実を取りに行くのは、それに近かった。実際、バカにされると思っていた。
なのに応援してくれたって事は、私の思っている事が分かっている証拠。
赤の実が、右手にあたった感触がした。
これだ!
「あと、少し……!」
≪ぱきっ。≫
まず、一つ目の赤の実、ゲット。もう一つ……!
左手に赤の実を持ち替えると、もう一つの赤の実に手を伸ばす。
≪ぱきんっ。≫
よし。無事に取れた。
額から流れた汗を拭い、油断した時。
≪がさささささっ!≫
足元の枝が折れたという事を私は、急には理解できなかった。
「…う、そ……っ?」
いつもなら、バランスを崩してもすぐに立てた。でも、今は違う。
油断しきってたせいで、何をやったって、遅すぎる。
下には、さっき折ってしまった木が転がっている。
運が良ければ木がクッションになって無傷、軽傷ですむ。
運が悪かったら?
考えるな考えるな考えるなっ!!
「リョウ……」
あの黒い髪、赤茶色の瞳を思いだすと、自然と涙が溢れてきた。
「また、会えるかな……?」
と。その時。
「っ……ケイッ!!!」
聞こえた。リョウの、低い声が。
確かにこの耳に、届いた。
≪どさっ。≫
「……リ、リョ―――」
「バカかッ!? お前は!!!」
真上から、リョウが私を見下ろしていた。
「……ごめん。頑張り過ぎちゃった……」
いつもは静かで、私の事を「君」って呼ぶリョウが、こんなに怒ってる……。
リョウの腕を離れて向かい合う。
「ありがとう、リョウ」
「……怪我がなくてよかった。バカでバカでしょうがない、いつも通りの君だし」
「そっちも、いつも通りの人をバカにする人に戻っててよかった」
私を助けてくれたし、と付け足すと、自然に顔が熱くなった。
リョウはニッと、笑うと、私の金色の髪をくしゃくしゃと撫でる。
「な、何?気持ち悪い……」
「いや、なんか孫ができたみたいで嬉しくって、つい……」
涙が頬を伝った。
「ケイ?ご、ごめん……」
「……ううん、リョウは、悪くない、悪く、ないよ…」
涙を拭って、私は赤の実をリョウに差し出す。
今日これを言えるのは、今しかない、そう思った。
「赤の、実?」
こくんと頷く。
「リョウ、誕生日おめでとう。これからもずっと、一緒にいよう」
END
超未熟で、誤字脱字、意味の分からない言葉や文章があるかもしれませんが、すみません……。その場合は、お知らせください。
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