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幼馴染の幸せを願うから、私は小さな嘘をついた

作者: 夕山晴
掲載日:2026/03/22

「小さな嘘をついた」で始まり、「嘘は本当になった」で終わる物語(1120字程度の文字数制限あり)縛りで書いてみました!


 小さな嘘をついた。


「私は絶対、王子様と結婚するの。大好きな本だってたくさんプレゼントしてくれて、困った時には白馬で格好良く助けに来てくれて、でね、ずっと私のこと好きだって言ってくれて、すごくお金持ちで、美味しい物もいっぱい作ってくれるシェフがいるお城に住んでね。それで、ずっとずーっと一緒にいるのよ。幸せになるの」


 山麓の村娘には、叶わない夢だった。

 父も母もいない。育ててくれた叔父のために、家で育てている薬草や花を売り、時には魔獣の角だって売りに行った。


 それでも街のみんなが夢いっぱいの未来を願うから、だから私も真似をした。精一杯の真似だった。


「うへぇ、また始まったよ夢見る少女」

「別にいいでしょ!」

「ホント好きだよなあ、王子様」


 商品を街へ卸しに来ると、店主の息子が遊び相手だった。時々納品にもきてくれる。

 同じ年頃の子と遊ぶのも良い、と叔父は時間を作ってくれて、街にくるたび、その息子アスモの友達とも遊ぶようになった。


 王子様に惹かれたのは、もう少し幼い頃。アスモが見せてくれた絵本だった。

 家には子供向けの絵本なんてなかったから、可愛い絵が描かれた本に驚いて。しかもお姫様が王子様にたすけられる、そんな物語が幼い私の心を奪っていった。それからずっと憧れがある。


「好きなんだけど。俺じゃダメなの?」

「だめよ、王子様じゃないでしょう」

「いいじゃん、本なんて俺が探してきてやるし」

「美味しい物も食べたいし」

「何が食べたい? 手順もレシピも覚えるさ」

「お金持ちじゃあ、ないでしょう」

「一体何が欲しいんだ。食うには困らない生活じゃ、不満かよ?」


 不満なんてあるわけない。

 でも、アスモを好きな子がいることを私は知ってる。いつも一緒に遊ぶあの女の子。可愛いワンピースを着てピアスが揺れて、お花のついた靴を履いた、お姫様みたいな彼女の方が、お似合いよ。アスモには。


 静かに首を振って、また嘘をつく。


「うん。やっぱりアスモは王子様じゃないからね。白馬だっていないし」

「だめか。あー、俺が絵本なんて読ませなきゃなあ……」


 私の村は魔獣管理を任されている。山で増えた魔獣を減らす仕事だ。十歳を過ぎれば子供だって働き手。もちろん私も。

 お姫様になんて程遠い。時には転んで怪我をして、凶暴な魔獣とは戦って、泥に塗れ血をも浴びる。


 ほんの少し判断を誤れば、命の危険だって。


「ミスったなあ。帰れるかな」


 血が流れる左足を引き摺りながら山道を下る。


 暗くなった山は魔獣のテリトリー。

 喰われるか、引き千切られるか。どうせなら、一思いにやってほしい。


 そんな時、私を探すアスモの声がした。

 そういえば今日は納品の日。

 必死な声を辿れば、小麦粉まみれのうちの荷馬に跨っている。


 違うってわかってる。

 でも幼い頃に憧れた姿がちらついた。


 ——ああ、ごめんね、もう誤魔化せないみたい。

 街の女の子には心の中で謝って。


 私の嘘は本当になった。



お読みいただきありがとうございます!


文字数制限で入れられなかったんですけど、主人公の両親は魔獣にやられてしまったので叔父に育てられてます。

村ぐるみで魔獣管理しているので、危険とは常に隣り合わせ。なので人並みの幸せは難しいだろうなって思ってる子でした。

最初の嘘で、書いてない「お城」は、アスモのお家です。

仕事は通いで続けるんじゃないかな。村の人口も少ないので。

幸せになるんだよー。

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