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四時間の奇跡

作者: なつめ
掲載日:2026/02/17

初めまして。なつめです。

暇つぶしに短編小説を書いております。






僕は死神だ。


 黒いマントも鎌も持っていない。ただ、一枚の紙を持っているだけだ。


 その紙には、名前と死亡時刻、そして「四時間」と書いてある。


 亡くなった人を、四時間だけこの世に戻すことができる。


 ただし、本人が強く望んだときだけだ。


 そして僕は、その四時間に立ち会わなければならない。


 


 最初に担当したのは、七歳の女の子だった。


 交通事故で亡くなった。


 彼女の願いは一つだった。


 


「ママに、ありがとうって言いたい」


 


 四時間だけ、奇跡が起きた。


 病室のベッドで、女の子は目を開けた。


 母親は信じられないという顔をした。


 


「ゆ、夢……?」


 


「ちがうよ」


 


 女の子は笑った。


 


「ママ、ありがとう」


 


 母親は泣きながら抱きしめた。


 時間は静かに減っていく。


 三時間五十九分。


 女の子の体は少しずつ透けていった。


 


「いや、待って……」


 


「ママ、だいすき」


 


 その言葉を残して、消えた。


 僕は何もできず、ただ見ていた。


 


 二人目は七十代の男性だった。


 心筋梗塞だった。


 


「妻に会いたい」


 


 しかし、妻は三年前に亡くなっていた。


 僕は言った。


 


「四時間だけです」


 


 男性は少し黙ったあと、首を振った。


 


「なら、いらん」


 


「どうせまた、別れるんだろ」


 


 僕は何も言えなかった。


 再会のあとに、もう一度別れがくる。


 それが、この奇跡の決まりだった。


 


 三人目は二十三歳の青年だった。


 自ら命を絶った。


 


「戻りたい」


 


 強い願いだった。


 四時間だけ、彼は目を覚ました。


 


「……死んだはずだよな」


 


「四時間だけだ」


 


 僕がそう言うと、彼は笑った。


 


「短すぎるだろ」


 


 それでも彼は、スマートフォンを手に取った。


 未送信のメッセージを送った。


 


『ごめん。本当は、生きたかった』


 


 すぐに返信がきた。


 画面の向こうで泣く声が聞こえる。


 


「生きてたら、言えなかったな」


 


 三時間五十九分。


 


「なあ」


 


「なんだ」


 


「ちょっとだけ、楽になった」


 


 そう言って、彼は静かに消えた。


 


 何人もの最期に立ち会った。


 再会、謝罪、怒り、沈黙。


 どれも四時間で終わる。


 


 ある日、僕の持つ紙に、自分の名前が書かれていた。


 死亡時刻は今日。


 思い出した。


 僕は事故で死んだのだ。


 そのあと、この役目を与えられた。


 そして今日、任期が終わる。


 


 僕にも四時間が与えられる。


 会いたい人は一人しかいない。


 母だ。


 


 家のドアを開ける。


 


「ただいま」


 


 母は固まった。


 


「……夢?」


 


「ちがうよ。四時間だけ」


 


 母は泣きながら僕を抱きしめた。


 温かかった。


 


 三時間。


 二時間。


 一時間。


 


「もっと話したい」


 


「ごめん」


 


 時間が近づく。


 


「ありがとう」


 


 母が言った。


 


「生まれてきてくれて、ありがとう」


 


 体が透けていく。


 最後に見えたのは、泣きながら笑う母の顔だった。


 


 四時間は短い。


 でも。


 永遠よりも、きっと価値がある。

 

終わり

どうだったでしょうか。


僕も作ってる途中ウルウルしちゃいました。


初心者ですが頑張って作っていきますので応援よろしくお願いします。






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