月のゆうびんきょく ― Echo Story
未来の町に、夜だけ開く郵便局がある。
月の光に照らされると、空にポストが浮かび上がり、そこに手紙を投げ入れることができる。
返事は必ず届く――ただし、それは「慰め」か「皮肉」かのどちらかだ。
「友だちと仲直りしたい」と書いた子どもの手紙。
返事はこうだった。
「仲直りは簡単だ。謝ればいい。ただし、相手が許す保証はない。」
子どもは泣きながら翌日謝った。
友だちは笑って許した。
だが、返事の最後に書かれた一文が心に残った。
「次は、許されないこともある。」
「失敗ばかりでつらい」と書いた整備士の手紙。
返事はこうだった。
「失敗は地図のしるし?そんな甘い言葉に逃げるな。失敗はただの失敗だ。だが、積み重ねれば経験になる。」
整備士は苦笑して工具を握り直した。
その夜、機械は動いた。
けれども返事の最後に書かれた一文が心に残った。
「次の失敗は、誰も笑ってくれないかもしれない。」
月のゆうびんきょくは魔法ではない。
返事はいつも現実を突きつける。
夢を見せるのではなく、夢の裏側にある事実を知らせる。
それでも、人は夜ごと手紙を投げ入れる。
なぜなら、辛口の返事であっても、そこには「次の一歩を踏み出すための現実」が書かれているからだ。
月は静かに照らし続ける。
やさしくもなく、冷たくもなく。
ただそこにある光の下で、人は自分の未来を選び取るのだ。
このお話は、子供用と大人用の二つのお話があります。




