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呪われた少女は強面陰陽師の嫁になる  作者: 佐倉海斗
第二話 桐生邸、襲撃事件
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02.義孝の帰宅

 義孝が帰宅をすると、雪は勢いよく昼間の出来事について語りだした。

 義孝は驚きながらも話を聞く。


 ……鬼は珍しいのでしょうか。


 鬼が出たと聞いた途端に義孝の表情が変わった。


 ありえないと言いたげな顔だった。


「母さん、本当に鬼だったのか?」


「そうですよ。母さんを疑うのですか。美子さんも見ましたよね。黒い人型の2本角の狂暴なあやかしでした!」


「……黒い肌をしていたのか?」


 義孝は雪を問い詰める。


 それに対し、美子も全力で頷いて肯定をした。雪もその通りだといわんばかりの顔をした。


「黒い肌のあやかしは、陰陽師に使役されている証拠だ」


 義孝の言葉に雪は動きを止める。


 美子も目を見開いた。


 ……誰かが操っていたということですか。


 嫌な予感は的中する。


 ……一体、なんのために。


 義孝に恨みがあったのならば、美子が嫁ぐ以前に襲撃されていてもおかしくはない。しかし、美子の異能力を確かめるかのような視線を向けていたことを思い出した。


「鬼は私を見ていました」


 美子は体を震わせる。


 恐ろしかった。


「異能力を使ってしまったのです」


 美子はあやかしが使役をされる場合があることを知らなかった。


 そのため、深く考えることもなく、異能力を使ってしまった。雪を助けることで精いっぱいだった。


「鬼を通じて陰陽師が見ていた可能性が高いな」


「どうしましょう」


「どうすることもできない。せめて、あやかしを操ることができる者がわかればいいんだが……」


 義孝は頭を抱えた。


 ……あやかしを操る。


 心の中で言葉を繰り返す。


 どこかで聞いた覚えがあった。幼い頃、得意げに話していた人がいた。


 ……譲様。


 幼馴染だ。


 同じ赤い目の仲間でもある。


 朱雀院では貴重な存在として崇められている譲だが、同じ赤い目をしているのにもかかわらず、迫害を受けている美子に同情的だった。


 ……一体、なんのためにでしょうか?


 譲は美子が異能力を持っていることを知らない。


 しかし、赤い目は貴重なのだと何度も語っていた。


「あやかしを操れる者を知っています」


 美子は義孝の隣に座った。


 それから義孝の手を握る。恐怖で倒れてしまいそうだった。


 義孝の手を握ると不思議と安心できるのだ。


「朱雀院譲様です」


「朱雀院? 陰陽師の名門の一つじゃないか」


「はい。譲様はあやかしを操れると言っていました」


 美子の言葉に義孝は驚いた。


 ……譲様。


 譲があやかしを使役したとは限らない。


 しかし、他に心当たりがいなかった。


「譲様は幼馴染です」


 美子は気まずそうな口調で言った。


 幼い頃から何度も会話を重ねてきた。途中から譲の自慢話になることも多かったが、青龍寺家ではない者で唯一声をかけてくれた存在だった。譲に救われたことが何度あったかわからない。


「お義母様を襲撃するとは思えません」


 美子は視線を落とした。


 美子はそういいながらも、譲の関与を疑ってしまう。


 赤い目の中でも強力な力を持っているとされている白髪の譲ならば、簡単にあやかしを操ってしまえる。美子ですらもあやかしを追い返せたのだ。譲ならば命令をして使役することができるだろう。


 ……否定しなければいけませんのに。


 疑ってしまう。


 美子の大切な人を傷つけたのは、誰なのか。


 心当たりが浮かんでは消えた。


「いいえ。思いたくはありません」


 美子は自分の言葉を撤回した。


「ですが、譲様ならば、あやかしを操ることができるでしょう」


 美子は断言した。


 実際に操る姿を見たわけではない。


 白髪と赤い目をしている者はあやかしを使役できるというのは、噂にすぎない。


「朱雀院か」


 義孝は考える。


 仕事柄、朱雀院家のように名門出身の陰陽師と出会うことは少なくはない。しかし、名門出身の陰陽師は政府の機関である異能特務課に所属せず、家単位で動くことが一般的だ。


「朱雀院譲の噂は聞いたことがある」


「噂ですか?」


「そうだ。白髪と赤い目の陰陽師は彼以外にはいないから、間違いはないだろう」


 義孝はため息を零した。


 ……噂ですか。


 青龍寺家では朱雀院家は丁重に扱われていた。同じく名門として平等な付き合いをしていきたかったのだろう。当主同士の交流も多かった。


「鬼のあやかしを調伏したという噂を聞いた」


「鬼ですか」


「そうだ。よりにもよって、鬼だ」


 義孝は譲の仕業と考えているのだろう。


 ……譲様。


 美子も同じだった。


 しかし、理解ができない。


 美子にとって譲は優しい幼馴染だ。


「母さんと美子さんにそれぞれ護衛用の式神をつける。なにかが起きてからでは遅いからな」


 義孝の出した結論はそれだった。


 今後も襲撃されることを前提としたものだ。


「義孝さん、それは今後も襲撃をされるということですか? 相手は美子さんの異能力を把握している可能性があるのでしょう?」


 雪は初めて口を出した。


 それから、不安そうな視線を美子に向けた。


「相手の狙いは美子さんではないでしょうか」


 雪の言葉に美子は目を見開く。


 襲撃されたのは雪だ。鬼の標的にされ、大けがを負わされたのにもかかわらず、雪は美子の心配をしていた。


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