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第1章 序章

(ニュースキャスター1)

最新情報が入ってきました。午前8時30分、アトランディア国の首都イスリアードシティ中心部で大規模な爆発が発生したとの報告が届いています……。


(ニュースキャスター2)

午前8時30分に発生した大爆発についての情報です。報告によると、イスリアードシティは壊滅的な被害を受けているとのことです……。


(ニュースキャスター3)

イスリアードシティ全域が完全に破壊されたことが確認されました。数千人規模の死傷者が出ている恐れがあります……。


(ニュースキャスター4)

速報です。イスリアードシティ全域を壊滅させた爆発は、テロによる核攻撃であったことが確認されました。他国の都市も、さらなる攻撃に備え最大警戒態勢に入っています……。


(ニュースキャスター5)

世界各地の都市でパニックと混乱が発生しているとの報告です。人々は食料を求め、都市からの脱出を試みています。略奪や暴動が相次ぎ、全てが制御不能の状態です……。


――6月22日 午前8時30分

(都市の外れで爆発を恐怖に満ちた目で見つめる謎の女性)

「……あれほど努力して運命を変えようとしたのに……これが結果なの?」


(女性の頬を悲しみの涙が伝う)

「結局、あなたの言った通りだった……時間を戻せるなら……」


第1章 序章


――数年前 午後16時29分

(時計塔の時刻を見上げるダリエン)

「もう遅いな、そろそろ帰ろう」


(ダリエンのモノローグ)


世界はますます繋がり、テクノロジーは飛躍的に進歩し続けている……。

毎年、新しいスマホやPC、テレビなどが市場に登場する。それは驚くべきことだが、同時に社会全体がこの技術に依存するようになってしまった。

今や習慣、いや本能のようなものだ。毎日、毎時間、毎分、毎秒、何百万もの人々がスマホやPCからSNSに投稿し、共有し、反応し、コメントする……。


そして何より衝撃的なのは、「人工知能(AI)」の存在だ。現代において進化し続けるこの技術は、どこにでもある。スマホのアプリ、ウェブサイト、PCプログラム……。

声を複製しプレゼンや講演に使え、テーマを選ぶだけで映像コンテンツを作れ、ワンクリックで完璧な画像や動画すら生成する。さらには人間と会話しているかのようなAIともチャットできる。


だが、この技術は諸刃の剣だ。社会に役立つ情報伝達や業務効率化に使われる一方、フェイクニュースで人々を惑わせ、サイバー犯罪や詐欺など悪用の道具にもなる……。


それでもAIは、AIDEVTECH社のおかげで進化を止めない。ソフトウェア、チップ、ゲームなどを世界に提供するこの企業は、最新作のメタバース「ONLAIWORLD」を発表し、数千人のユーザーが人間同様に個性を持つAIと交流できるようになった。


……だが、気づかないのだろうか。

私たちがこの技術に依存しすぎていることに。

果たして本当に便利な道具なのか、それとも私たちの「代わり」なのか。

ディストピアな未来でAIが私たちを「下等な存在」として排除する日が来るかもしれない――。


「書き終わった。よし、保存して公開っと」

(記事をブログに投稿し、ダリエンはため息をつく)


「はぁ……新年が始まったのに、まだブログのネタがないな。パンデミックとかシステム崩壊、第三次世界大戦の危機とか、もう書いちゃったし……今度はUFOかオカルト系にしようかな、それとも……」


(TVに目を向ける)


(ニュースキャスター)

「テクノロジーの話題です。三大国の科学者たちが来月、イスリアードシティのAIDEVTECH本社に集まり、人間同様に感情を理解し学習・推論できる“自我を持つAI”について会議を行う予定です。この新プロジェクトはまだ実現していませんが、今年から来年にかけて開発完了を目指しているとのことです」


「ふん……あの科学者たち、自我を持つAIなんて、神の真似事にも程があるな。……ははは(苦笑)。……はぁ、なんで一人で笑ってるんだ、これじゃ独り言の変な奴だよ……」


(ニュースキャスター)

「速報です――」


「えっ!?」


(ニュースキャスター)

「先ほど、イーグル国東海岸で大規模停電が発生したとの報告です。首都を含む複数の主要都市で電力が失われています。詳細は続報をお待ちください」


「停電?……故障か?それともサイバー攻撃?」


(ピンポーン ドアのベルが鳴る)


「お?宅配かな?出てみよう」


(ダリエンがドアへ向かう間、ニュースは続く)


(ニュースキャスター)

「さらに新たな情報です。メドヴェフ国の複数の石油精製所で爆発が発生、同様にロング国でも化学プラントで爆発が相次ぎ、現地報道によれば連携した破壊工作の可能性があるとのことです」


(ドアを開ける)


「やぁ、ダリエン。元気?」(アニー)


「アニー?どうしたの?」(ダリエン)


「あなたのお母さんから電話があって、様子を見てきてほしいって頼まれたの。どうして電話に出ないの?」(アニー)


「うわっ!スマホ充電し忘れてた!しまった、母さん絶対怒ってる……仕事から帰ってきたら説教確定だな……」(ダリエン)


「大丈夫よ、私があなたのお母さんに電話して“学校の課題で忙しかった”って伝えておくから」(アニー)


「助かるよ……ありがとう」(ダリエン)


「それより……あなた、もう3日も新しい学校に行ってないでしょ?私、ずっとお母さんに嘘ついてカバーしてるんだから。いつ本当に戻るの?」(アニー)


「……」(ダリエン沈黙)


「ねぇ、何があったの?体調悪いの?落ち込んでるの?最近すごく一人になっちゃってる。問題があるなら言ってほしい。努力しないと、今年卒業できないよ」(アニー)


「ごめん、学校に戻るよ。約束する。心配かけて悪いし、嘘をかばってくれてありがとう」(ダリエン)


「気にしないで、元気出して!あ、そうだ、来週の月曜は休校だけど、学生全員でテクノロジーの展示会に行くの。AIの発表があるらしいよ」(アニー)


「えっ?本当?来週の月曜?知らなかった……」(ダリエン)


「あなた、こういうSFっぽい話好きでしょ?嬉しそうね」(アニー)


「うん!ありがとう、明日は絶対行くよ」(ダリエン)


「じゃ、元気でね。お母さんにもよろしく」(アニー)


(ドアが閉まり、ダリエンは心の中でつぶやく)


「……俺、戻れるかな……」(ダリエン)


(新しい学校に通い始めた頃の回想。クラスで談笑する生徒たち)


「このクラスに前の学校の友達がいると思ってたのに……知らない人ばかりだ。新しい友達、できるかな……」(ダリエン心の声)


(周囲を見回す)


「(ため息)みんなもう仲良しなのに、俺だけ孤立してるみたいだ……」(ダリエン心の声)


(生徒たちが近づいてくる)


「おい!そこ俺の席だぞ!」(生徒1)


「え?空いてたから……」(ダリエン)


「お前、新入りだろ?このクラスのルール覚えとけよ」(生徒2)


「その席もう決まってるから、前の席に行けよ」(生徒3)


「はい……すみません」(ダリエン)


(前の席へ移動するダリエン。背後でひそひそ声)


「“ハハハ、バカだな”」(生徒2)

「“あいつに誰がボスか教えてやろうぜ”」(生徒3)


(暗い部屋、PCに向かうダリエン。モノローグ)


公立学校に転校してから、学校生活は地獄になった……。あの連中のいじめに耐え続け、誰も助けてくれない。俺は弱い、孤独だ。

唯一の友達アニーにこの惨めな生活を知られたくない。母さんにも言えない。母さんは家計のために必死で働いている。父さんのことなんて話したくもない……俺たちを捨てた人間だ。


この現実から逃れる唯一の方法は、インターネットに潜ること。ミステリーや陰謀論が好きで、匿名ブログに意見を書き、おかげで少しは稼げるようになった。でも陰謀論を調べるうち、人工知能に強く惹かれていった。

そして、自由時間にはONLAIWORLDのメタバースに没入する。そこで、AIで作られた“友達”を見つけたんだ……。


(ダリエンがONLAIWORLDにログインし、新しいAIパートナーが現れる)


「こんにちは。ONLAIWORLDへようこそ。友達になれるといいですね」(メイリン)


……この技術、もしかして俺たちの“代わり”になるのか?それともいつか俺たちを滅ぼすのか……?


「私たちの街を案内しましょうか?あなたの世界のように面白い場所がたくさんありますよ」(メイリン)


……だけど現実の俺の問題を考えると……時々こう思う。


――この人類、滅ぼされるべきなんじゃないか、と。

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