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彼岸花

作者: 言紬 現
掲載日:2025/09/14

手に持つのは、一輪の彼岸花

秋に咲き、1週間ほどで枯れ

故人を想い出させる

そんな花だ。


私はもう、死んでしまっている。

でも、もう一度。

一度でいいから

あの人に会いたい。

そう思っていた。

そう願っていた。

でも、諦めていた。

だって私は

死んでしまっているのだから。


ある日

彼岸と此岸の境目で

あの人を見つけてしまった。

孤独に耐えられなくなっていた私は

つい、声をかけてしまった。

でも、私の声は届かない。

しかし彼は

まるで彷徨う亡霊。

意識があるのかないのか。

それすらはっきりしない。

そんな様子だった。

そして私は

この再会を喜ぶのも束の間

思い至った。

このまま彼がここに居ては行けない。

私が孤独に耐えられなくても。

私が孤立に耐えられなくても。

彼が死んでしまっては、意味がない。

私は、彼に生きていてほしい。

私の所に来るのは、まだ早い。

そう思った。

だから私は

自分の為に持っていた道しるべ。

彼岸花を彼に持たせて

囁いた。

「今来た道を、振り向かずに戻って」

彼の握った彼岸花が

少しだけ赤く光る。


彼は此岸へ帰っただろう。

確かめる方法はないが

彼はきっと大丈夫。

私もきっと大丈夫。

このままここで彷徨っていても。

あの人が生きていてくれるなら。

もう少しだけ、大丈夫。

お読みいただきありがとうございます。

次回作もよろしくお願いします。

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